公爵の娘と墓守りの青年
神の言葉をただ紡いでいるわけではなく、しっかり力――魔力も加えている。
人間の中でも持つことが稀と言われている魔力をトイウォースは持っている。
だから、父は彼を呼んだのだろう。
ネレヴェーユはじっとトイウォースを心配そうに見た。
うっすらとだが、トイウォースの額に汗が浮かんでいる。
たくさんの魔力を使っているからだろう。
ネレヴェーユは申し訳なさでいっぱいになった。
その彼のおかげで、徐々に封じられていた女神の力が戻り、身体中に行き渡るのをネレヴェーユは感じた。
トイウォースが触れている白い壁から、隠されていた扉も現れ、ゆっくりと開いていく。
扉が完全に開き、トイウォースはネレヴェーユを見た。

「――出来ました」

にこやかに言い、トイウォースは扉に手を向ける。

「ネレヴェーユ様。さぁ、どうぞ」

綺麗な整った顔に笑みを浮かべ、トイウォースはネレヴェーユを導く。まるで、貴婦人を案内する紳士のようだ。

「ありがとうございます、トーイ」

花のように微笑み、ネレヴェーユはトイウォースに導かれるまま、閉じ込められていた部屋から出る。
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