公爵の娘と墓守りの青年
一歩、また一歩と踏み締めて、ネレヴェーユは歩く。
神殿の廊下をトイウォースと共に歩き、ネレヴェーユは近くの窓を開けた。
ちょうど夜明けだった。
夜明けの空気を吸う。
ネレヴェーユは外の空気を五百年ぶりに吸ってみると懐かしく感じた。
こんなにも長い時間、閉じ込められていたのかと実感する。

「これから後のことは大丈夫ですよね? ネレヴェーユ様」

「はい、本当にありがとうございます。トーイ、貴方のおかげです」

華やかな笑みを浮かべ、ネレヴェーユは頭を下げた。久し振りの外の世界に嬉しさのあまり、目尻に涙が浮かぶ。

「いえ。私は貴女のお父上に頼まれただけですから」

小さく笑って、トイウォースは言った。
その笑みを見て、ネレヴェーユも顔を綻ばせる。

「それでは私はこの辺で帰りますね、ネレヴェーユ様」

トイウォースが挨拶をして、一礼するとゆっくりと身体が透けていった。
彼の今の生がある場所へ戻ろうとしているのだろう。

「はい。気を付けて。本当にありがとうございます、トーイ」

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