公爵の娘と墓守りの青年
(……この会議より、早く書類を終わらせて、カイさんの所に行きたいのに)

「……ウェル様、まだ結婚する気がなくても、ちゃんと話を聞いて下さい」

ウェルシールの横に立っているエルンストが小声で告げた。

「何で分かったの?!」

背筋を伸ばし、直立しているエルンストにウェルシールも小声で聞く。

「そりゃあ、長く一緒にいると分かりますよ〜」

のんびりとした小声で、イストが言う。
緊張感漂う会議室内であるまじき暢気さだ。

「はい。ウェル様もイスト兄さんも貴族の皆さんの面倒臭い自慢話を聞いて下さい」

小声でウェルシールとイストにエルンストは言い放った。とても苛々した声だ。

「エル君ってば苛々してるなぁ〜」

弟の苛々に慣れているのか、イストはのほほんとした口調で言う。

「イスト兄さん、後で説教してもいいですか」

じろりと横目で睨み、エルンストは凄む。
イストはそんな弟の脅しのような注意に怯むこともなく、肩を竦めた。

「――と、いうことで、ウェルシール陛下。是非とも我が娘を婚約者候補に!」

いつの間にか、エルンスト曰く『貴族の皆さんの面倒臭い自慢話』から『貴族の皆さんの面倒臭い我が娘自慢話』に変わっていた。
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