公爵の娘と墓守りの青年
更には、ウェルシールに目を向けて他の貴族達が「ワルト伯爵のご息女より、我が娘を!」と矢継ぎ早に名乗りを挙げた。

「……え〜っと……」

突然、話を振られ、ウェルシールは口ごもった。

「ワルト伯爵、いきなりご息女を薦めては陛下も困惑されるだろう! 他の皆もだ。何のための会議だ」

自分の娘を薦めるワルト達に、ウェルシールの近くに座る痩せてはいるが威厳溢れる初老の男性が怒鳴った。
男性の一喝に、「自分の娘を!」と薦めていた貴族達が静かになる。

「オルレン宰相……」

ホッと安堵の息を小さく洩らし、ウェルシールはオルレンに感謝を込めて会釈をした。

「流石、父さん。お年を召されても怖さは相変わらずだな」

小さくイストが呟くと、エルンストがちらりと横目で見た。

< 95 / 482 >

この作品をシェア

pagetop