公爵の娘と墓守りの青年
貴族達の自慢話を愛想笑いで聞くウェルシールをイストは申し訳なさそうに見つめ、呟いた。

「……何を試すつもりですか、イスト兄さん」

「まぁ、見てたら分かるって」

爽やかに笑い、イストは弟の肩を叩いた。

「陛下! 是非とも、我が娘を陛下のお傍に!」

懇願に近い声音で貴族の誰かが叫んだ。
聞くのが疲れたウェルシールは愛想笑いを浮かべるだけに留め、言及は避けた。

「あの、ウェルシール陛下。少しだけ宜しいでしょうか?」

更に何かを言いたげなその貴族より先に、イストが声を発した。

「どうぞ」

貴族の娘自慢ばかりを聞かされていたウェルシールは、内心、ほっとしながら頷いた。

「ありがとうございます、陛下」

恭々しく頭を垂れてイストは自分の主人に感謝の意を述べる。

「先程からウィンベルク公爵が何も仰っていらっしゃらないようですが……」

「そういえば、そうだな……」

イストの言葉に同調するようにオルレンが頷きながら、顎に手をやる。

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