公爵の娘と墓守りの青年
「――申し訳ございません、陛下。私には息子はいますが、娘はいません故、周囲の皆様の話を聞かせて頂いていたのです」
静かにそう告げて、ウィンベルク公爵マティウスは頭をウェルシールに下げた。
「ん? 貴公には姪御がおられたのではないかな?」
オルレンが思い出すようにマティウスに質問した。
「え、はい。確かに私の兄に娘がいましたが……」
言葉を濁すように頷き、マティウスは少し顔を下に向ける。
普段の公爵を知っているウェルシールとイスト、エルンスト、オルレンは彼の様子を不審に思い、眉を寄せた。
他の貴族達もマティウスの一挙手一投足を見守っている。
「それで提案なのですが、ウィンベルク公爵の姪御様を陛下の婚約者候補にするというのは如何でしょう?」
不審には思いつつも、すぐ質問に入り、イストはマティウスを真っ向から見つめた。
マティウスは弾けたように下に向いていた顔を上げる。驚いて目を見開いている。
「お待ち下さい。確かに前の公爵である私の兄リゼラードには娘がいます。ですが、私の姪は兄夫婦が事故で他界した時から行方不明なのです」
本当は行方不明でも何でもないのだが、マティウスはそう言わざるを得ない理由がある。それを押し隠して、マティウスは表情を変えず告げた。
「ですから、先程のご提案はなかったことにして下さい」
マティウスはもう一度、ウェルシールに頭を下げた。
静かにそう告げて、ウィンベルク公爵マティウスは頭をウェルシールに下げた。
「ん? 貴公には姪御がおられたのではないかな?」
オルレンが思い出すようにマティウスに質問した。
「え、はい。確かに私の兄に娘がいましたが……」
言葉を濁すように頷き、マティウスは少し顔を下に向ける。
普段の公爵を知っているウェルシールとイスト、エルンスト、オルレンは彼の様子を不審に思い、眉を寄せた。
他の貴族達もマティウスの一挙手一投足を見守っている。
「それで提案なのですが、ウィンベルク公爵の姪御様を陛下の婚約者候補にするというのは如何でしょう?」
不審には思いつつも、すぐ質問に入り、イストはマティウスを真っ向から見つめた。
マティウスは弾けたように下に向いていた顔を上げる。驚いて目を見開いている。
「お待ち下さい。確かに前の公爵である私の兄リゼラードには娘がいます。ですが、私の姪は兄夫婦が事故で他界した時から行方不明なのです」
本当は行方不明でも何でもないのだが、マティウスはそう言わざるを得ない理由がある。それを押し隠して、マティウスは表情を変えず告げた。
「ですから、先程のご提案はなかったことにして下さい」
マティウスはもう一度、ウェルシールに頭を下げた。