【完結】終わった恋にフラグはたちません!
最 終 話 ☆ 終わった恋にまたフラグはたつ
勢いよくエレベーターに乗り込んだものの、たった二階下に降り立った私達。
エレベーターに乗っている僅かな間も、ゆうちゃんは私の手をギュッと力強く握りずっと黙ったまま。これはかなりのご立腹のように見える。
ゆうちゃんに内緒で余計なことをしようとしたから……怒ってしまったのかな。
エレベーターを降りた後も手を引っ張られるがまま、ある客室へ入れられた私。入ったのと同時に握っていたゆうちゃんの手は離れていったが、そこへもっとゆうちゃんの手を握っていたかったな…という私の邪な心情が揺れ動く。
部屋に入ると電気は点けてなくとも目の前に広がる綺麗な夜景の光でとても明るく感じた。
「あ、の─…ゆうちゃん。怒ってる、よね? あの、ごめんなさい! 勝手なことをしようとして、でも私……」
「なんなの伊織、その恰好」
え、恰好?
あ─…もしかしてこんな綺麗な格好、私に似合ってないってこと、かな……
「マジ何なの…可愛すぎて理性保つの限界なんだけど!」
「え……かわ、いい?」
「もう、誰にも見せたくないから……今すぐここで脱いで」
思いもよらないゆうちゃんのびっくり発言に私は激しく動揺し始める。
「ぬ……え!? ちょっとゆうちゃん突然何言って」
「それを脱いで今すぐ伊織を抱きたいんだけど……ダメ?」
「だ、ダメって……」
真っすぐな瞳に見つめられてそんなこと言われたら……断れなくなる……。
ううん、そうじゃない、私もずっと、ゆうちゃんが恋しかった……欲しかった。こうなりたいって──いつも思っていた。
「……たぶん……ダメ、じゃな、い」
「うん。ダメって言われても僕は抱くけどね」
「え─何それ、じゃあ聞く意味な──」
待ちきれないと言わんばかりの、喰われるように激しく重なるゆうちゃんの唇。
何度も何度も激しいキスを重ね──私達はそのまま広いベッドへと倒れ込む。
そのまま私に覆い被さるような態勢になったゆうちゃんは勢いよく自分の上着を脱ぎ捨てていく。
そしてゆうちゃんの大きくて温かな手は、そのまま私の背中にあるワンピースのファスナーに手をかける。
「フフッ」
「…どうした伊織?」
「ううん……今日あったことって私達まだ何も話してなかったなーって。……こうなることにガッツ気過ぎかな、私達?」
「そりゃ、やっと互いの気持ちがわかり合ってずっとこうなることを夢みてたんだ。ガッツ気過ぎても僕はまだ全然足りないけどね」
「……うん、私も。──── ゆうちゃん…愛している」
その言葉と共にゆうちゃんの熱い抱擁は更に強くなっていく。
「僕も──八年間ずっと逢いたかった、愛してた、これからも永遠に愛していくから…伊織……」
その日の夜、私達は八年間の刻を取り戻すみたいに、お互いを激しく求め合い、愛し合い、そして……やっと戻ってきた幸せを噛み締め続けたのである────