【完結】終わった恋にフラグはたちません!
◇ ◇ ◇
次の日──
私にはまだやらなきゃいけないことが残っていた。
家に戻った私が一番最初に向かったのは石川君が泊まっている部屋。
石川君の気持ちに向き合って、ちゃんとお断りをしなければいけない。
「── 頭、上げてくださいよ、立木さん」
“ごめんなさい” “好きになってくれてありがとう”……という言葉を伝え深々と頭を下げた私に、石川君は少し困ったような表情を浮かべる。
「もう、わかってるっすから…澪先生や立木さんの強い想いに俺の入る隙間なんて最初からなかったんっす」
「石川君……」
「でも立木さんを好きになったことは全然後悔してないんで……まだもう少しだけ、この気持ちがなくなるまで立木さんを好きなままでいさせてくれませんか」
少し悲しげな顔で笑顔を浮かべる石川君に、私は小さく頷くことしかできなかった。
こんな私を好きになってくれて……本当にありがとう、石川君。
「あ─…けど、澪先生に負けないって啖呵切っておいてあっさりなんて、なんか恥ずかしいっすね」
「そんなことないよ! 石川君も亜里沙ちゃんも、ちゃんと自分の気持ち伝えられてすごいかっこいいよ!」
“かっこいい”という言葉に反応した石川君は一気に顔を赤くして照れた顔を必死に隠そうとする。
「そ、そういうことは、澪先生だけに言った方がいいっすよ」
「あ……ご、ごめん」
本当だよ! もっとよく考えてから発言しなきゃ。
ガチャ──
私の不用意な発言でお互い気まずい空気になった時、急に部屋のドアが開いた。
「話しているところごめんね。伊織、まきちゃんが来てくれたよ」
「あ、はい! 私、案内してきますね」
石川君とゆうちゃんを残して急いで部屋を後にした私は玄関へと向かった。
「石ちゃんも行こう」
「あ、澪先生…少しお話しいいですか」
「ん、何?」
「……俺、アシスタントを辞めてデビューに向けて自分の漫画を頑張ろうかと思ってるんっす。…急に、ワガママ言ってスミマセン」
「…そっか─…うん、わかった。石ちゃんみたいな戦力を失うのは痛いけど、でも今度はライバルになるんだね」
「ライバルなんて…澪先生はいつまでも俺の手本で憧れっす」
「あ、でも…伊織のことは譲らないからね」
「ハハッ、わかってるっす」
和やかな雰囲気を醸し出した二人は並んでリビングへと向かっていった。