【完結】終わった恋にフラグはたちません!
「ちょっとお兄ちゃん! 八年も連絡よこさないでどこ行ってたのよ!……って言うか先に実家に帰りなさいよ」
「え─、やだよ─! 絶対、親父に殺されるじゃん」
「殺されるもなにも、お兄ちゃんはもう死んだものとして見られてるよ」
「ハァ? 何だよそれ─」
「八年も連絡よこさないでいたんだから自業自得!」
「ハイハイ…って、それよりゆうと伊織は相変わらず仲良さそうだな! ゆうも漫画家になってるなんて知らなかったぞ─。……で、ベィビーはまだなのか?」
────……あぁ、そうだった!
私達が離婚した時は既にお兄ちゃん、日本にいなかったんだ。連絡も取れなかったし……一から話すと説明が長くなりそうだ…
「司……とりあえず、今は色々と説明がめんどくさいから、お義父さん達に一回顔見せに行こっか」
「やだよ─! 俺、殺させる─!
……あ、そうだ、ゆうも一緒に来てくれよぉ─。ゆうだったら皆の信頼厚いしさ─」
いやお兄ちゃん……今はその信頼も破綻してるんだって。
泣きつくお兄ちゃんをしばらく見つめながら、ふ─…と一つ大きな溜め息を吐いたゆうちゃんは、何やら大きな覚悟を決め出かける準備を始める。
「ごめん皆。ちょっとだけ出てくるから原稿の方は進めておいてくれるかな」
「……ゆ、うちゃん。本当に行く、の? ゆうちゃんもぶっ飛ばされるかもしれないよ」
「──だって、今すぐ伊織と結婚したいし、それにはもう一度お義父さん達の許しを取らなきゃね」
ゆうちゃん──
私達の再婚のこと、ちゃんと考えてくれてたんだ……ありがとうゆうちゃん。
私も早くまた一緒になりたい…
「私も、私も一緒に行く!!」
「え─、伊織もかよ─……って、また結婚って何のこと?」
「お兄ちゃん(司)には後で説明するから!!」
同じ言葉をハモった私達を見てお兄ちゃんは一言。
「やっぱお前達、相変わらず仲いいな─」
お兄ちゃんのその言葉が何だかおかしくて……私とゆうちゃんはお互い目を合わせ笑ってしまったのだった────
──“遠回り”
その言葉が合っているのかどうかはわからない。けれど私達はお互いを密かに想い続けながらも、長い長い遠回りというものをしてきてしまった。
あの時、こうしていればああしていれば……そう思っても刻はもう戻せない。
だからせめて、再び回ってきたこの縁を私は大切に育んでいきたい。
今度は勝手に終わった恋だと勘違いしないように──
【完】