【完結】終わった恋にフラグはたちません!


──プルルルップルルルッ……


澪先生や石川君達の発言で場の空気が皆の様々な想いで淀んでいく時、ちょうどタイミング良く巻さんのスマホから着信音が鳴ったのだ。

「はい巻です。……お疲れ様です。はい、今一緒にいますが……え? ──はい、わかりました、それでは本人に伝えておきます。失礼します」

え……っと……ゆうちゃんが、バイ、セクシャル? それって……女性に限らず男性も好きって、こと、だよね? あれ、じゃあ私との結婚って……

「ねぇ立木さん。もしかして今、宿無し状態なの?」

驚き? ショック? 疑問?……自分でもよくわからない感情が頭一杯に溢れそうになっていた時、巻さんの問いかけでなんとかその感情を一瞬でも遠くへ追いやることができた。

「──え、あの、え─と……はい。その、住んでいた部屋が水浸しになってしまって、まだ住むところが決まってなくて……でも、どうして巻さんが?」
「うん。今、人事の人から電話で、住む場所を早めに決めてほしいらしいよ。色々と手続きがあるんだって。立木さんにも連絡したそうだけど繋がらないって言ってた」
「え!」

巻さんのその言葉を聞いて、慌てて手探りで鞄の中を探してみたがスマホはなかなか見つからない。こんな時に限って女子力欠如が仇となるものだ。

あぁ──もう! 何でこんな時に。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 ……あぁそうだ、伊織! 次に住むところが決まるまでうちで一緒に住めばいいんじゃない? 部屋も余ってるし、忙しいときに担当として身の回りのことをしてもらえると助かるなぁ─」

はぁ─? ちょっと、本当、この人空気読んでよ! 今だってもう状況も頭もぐちゃぐちゃで、一緒に住むなんてあり得ない!

「ちょ、ちょっと待ってください、あの、全くもって全然大丈夫ですのでお気遣いなく!」
「──でも確かに。立木さんと澪先生が元夫婦だったのならお互い気兼ねもないだろうし、担当者としてここで先生をバックアップして原稿が早くあがるのなら会社としてもありがたい。──すぐ編集長と相談してみるよ、僕は一旦会社に戻る」

巻さん──! 元夫婦だから反対に気まずいんですってばぁ。

巻さんはそう言うだけ言って、瞬く間に会社へ戻って行ってしまった。

なんなのもう─! 誰も人の話聞いてないしぃ──!

「そうそう。伊織も決めちゃいなよ」
「先生は黙っていてください! あのですね、皆さん……」

「ダ、ダメです!!」

その勢いある言葉に私は言いかけた言葉を飲み込んでしまった。再び部屋中が静まり返るのと同時に、皆その声がする方へ目を向ける。

突然、この話題に第四者の介入が始まったのだ。

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