【完結】終わった恋にフラグはたちません!
ずっと彼女を想っていた。けれど、もう逢ってはいけないのだとも思っていた。
しかし、たまたま見つけてしまった彼女の “ツブヤイター”。
そこには主に当たり障りない日常と趣味のことが載せられていた。
彼女はたまにしか更新しないけれど、その日常を垣間見ることが僕の日課と幸せになっていったのだ。
連のファンだと言う彼女は、このブースに絶対来るはずだよね。あぁ、彼女と逢ったら偶然に自然に声をかけて……それから時間があったらどこかでお茶でもして──。
この八年の間に僕は大手商社を退職し転職。当時、趣味で漫画を描いてネットに載せてはいたけれど、彼女のイメージしていた僕と全く違うから嫌われるんじゃないかと彼女には内緒にしていた。
それがある出版社の目に留まり現在に至っている。
でもまさか、彼女もこういうコミケとかに興味があったとは知らな……かっ、た……──!?
様々な思いにふけていた僕が、ふと顔を見上げた瞬間ある女性と目が合う。そして一瞬、体に雷撃でも受けたかのような衝撃が走る。
長い行列には多くの女の子達が並んでいたが、その中に忘れるはずもない彼女がそこにいたのだ。
い、伊織? や、ヤバい、本当に逢えた……ってあっちも気づいてるっぽい!? な、何か早く言わなくちゃ──
「──い」
「?」
「──伊織?」
さりげなく、偶然に自然に──
「伊織だよね?! うわぁ、何年ぶりかな──まさかこんなところで逢うなんて思わなかったよ……って、え、あれ、もしかして僕のこと覚えてない?」
「え、っと、ゆ……ゆうちゃ、んじゃないわよね……?」
やっぱり、伊織も僕のことに気づいていた! この後は自然にお茶でも誘って……
「なぁに─、覚えてるじゃない! 伊織とは何年ぶりだろうねぇ─。 あ、もし良かったらこの後……って、え? お─い、伊織!?」
──え……あ、あれぇ!? な、何で逃げるの伊織?
あー嘘だろ……もしかして、やっぱりこんな俺なんかに逢いたくなかったんだぁ─。……うわぁ─、何だこれ……思ってたよりダメージきっつ。