【完結】終わった恋にフラグはたちません!

もしかしたら……と、何度も私の妄想スイッチを押してしまいそうな案件がある。

編集長の命令もあり澪先生専属の担当となった私は、夕方定時に帰宅し澪先生やアシスタントさん達のご飯や掃除などのお世話をするようになった。
その時、先生や石川君に浅見君、双葉ちゃん達の様子を伺っていると、つい自分の妄想スイッチがオンに入りそうになるのだ。

──正直、BLは今まで専門外だったけれど、リアルな人達が身近にいるとそれもまたいい! と思うようになってしまうもの。
そして、その禁断の世界の先を思い切って石川君に尋ねてみたくなった。

「あの─……石川君。もしかして……なんだけどぉ、ここのアシスタントさん達は皆、澪先生と恋人関係だったり──」
「ありえませんねっ!!」
「あ、そ、そう……アハハハなんかごめん、変な事聞いて」

私の禁断の妄想はあっけなく終了──

いつも聞くことに対してワントーン遅めの石川君だったが、この時ばかりは全身全霊で直ぐ様、否定してきたのだ。そしてこの質問を境に石川君の態度が急変する。

「俺達、皆ノンケですから。まぁ双葉は先生に対して違う感情を持ってるかもしれませんけどね。……でも、そんな恋とか愛とかのレベルじゃないんっすよ、澪先生の存在は!!」
「え? あ、はぁ……」

な、なに急に。さっきまでの石川君とは別人みたいなんですけど!?

「澪先生の繊細なストーリーに美しい画力! それに今までの漫画とは比べ物にならないぐらいの壮大な構想力! デビューからあっという間にスターへの階段を駆け上り、今や一冊の漫画コミックの発行部数百万部越え。それに映画化やアニメ化もヒットし次はドラマ化……もはや澪先生は漫画界の “神” なんですよっ!! そんな恋人とかいう次元じゃないっす!」

一呼吸もなしに澪先生を語り出した代償か、石川君はゼェ─ゼェ─と肩で息をし始める。その熱弁の様子に唖然とするばかりの私は今の興奮した石川君に声をかけていいものか少し迷っていた。

「……あ─、え─と、なんか……ごめん」
「──あ! い、いえ、俺の方こそ。つい興奮しちゃって、すみません」
「いやぁ─、ちょっと……かなりビックリはしたけど澪先生への愛情はすごい伝わってきたよぉ─。石川君は澪先生の大ファンなんだね」
「──いや。大ファンというよりかは澪先生に近づきたいんっす」
「近づく?」

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