【完結】終わった恋にフラグはたちません!

あぁ、明日は待ちに待った最大規模のコミケが開催される─! 忙しい毎日をこの日の為に頑張ってきたと言っても過言ではない。
もう、好きな同人誌を何冊も買いまくるんだから!

駅の改札口を出たところで、ビールやおつまみを食しながら少女漫画を読み漁る週末の一連の行動……帰宅した後の癒しの時間が既に目の前に見え始めていた
──が、まさにそんな時だ。突然、スマホの着信音が鳴りだしたのである。

それは何の変哲もない購入時のままのベルの音。電話帳には仕事関係、もしくは既婚者ばかりの友人の番号しか登録されていなかった。そのうち、男性の番号は数少ない。

中身がごちゃごちゃな鞄の中から手探りでスマホを探しだす。
そう、──ここまでの少ない話だけでもわかるように、ここ数年の私は女子力がかなり欠けている。
社会人ということもあり身なりだけは一見きちんとしているように見えるが、人から見られない所はお構いなしの状態がしばらく続いていたのだ。
スマホを探し出すだけでも、まるで鞄の中からクジを引くような感覚。

ようやくスマホという宝物を探し当てた私は慌てて画面に目を移す。するとそこには“斉藤不動産”という文字が。

斉藤不動産……確か、アパートの管理不動産だったような……

スマホを探し当てるまでに時間を要した私は急いで電話に出た。

「は、はい。立木ですが……」
「あ! 103号室の立木さんですよね、出られて良かった! わたくし、あくつアパートを管理しております斉藤不動産の者なのですが、今すぐアパートに戻られることは可能でしょうか!?」
「え、あ、はい、今もう最寄り駅にいますのですぐ帰れますが……あの、何かあったんですか?」
「落ち着いて聞いてください! 立木さんのお部屋が、その、全て水浸しな状態でして……」
「……え……水、浸し?」


──水、浸、し……水浸し……

……ハァァァッ─! 水浸し──?!

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