【完結】終わった恋にフラグはたちません!
第十一話 ☆ アシスタント奪還への条件
“責められるべきは酒を飲むことではなく、度を過ごすことだ ─ by ジョン・セルデン”
まさしくその通りだと思う。
お酒に飲まれ、その場の雰囲気に呑まれゆうちゃんと……ハァ─、思い出しただけでも自己嫌悪──って言っても正直、自分では所々しか記憶にございませんのです……
そう、あれはゆうちゃんと一夜を過ごしてしまった翌日。今からもう遡ること一週間前のことだ──
──────────
ガンガン鳴り響く頭痛の最中、私は最悪な状態で目が覚めた。窓から降り注ぐ朝日が更に頭の痛さを助長させる。
「あったまいた─……眩しいし……あれぇ、昨日カーテン閉め忘れたっけ?」
頭痛箇所を手で押さえながら気だるい自分の体を無理矢理起こす。
ん……あれ、なんか、寒い?
寒さでブルッと震えた瞬間、ギョッと自分の上半身に目を見張った。
それは一糸まとわぬ自分の姿……動揺を隠せるはずがない。
はぁ、え、うそ!? 何で私、なにも着てないの?
慌てて布団をめくり中を見るが、やはりその下も下着などはつけていない。
……え─っと、ちょっと待ってよ……あれ? 私、昨日ってどうやって帰ってきたっけ?
確か……ゆうちゃんとタクシーに乗ってから家について、それから──
目を瞑り頭を抱えながら昨日のことを順に沿って思い出す。そしてそれが後半に差し掛かってきた所で、私は更に頭を抱え項垂れてしまったのだ。
あぁ─────……しちゃったのか、私─。いくらお酒に酔ってたからって……ゆうちゃんと?
全部は思い出せなかったけれど所々、鮮明に頭の中に流れ込んでくる映像。
それは久しぶりに見るゆうちゃんの無防備で私を欲してくる姿──
『いおり……愛してる』
私は一気に顔が真っ赤になった。
ダメダメダメダメ、思い出したらダメ! ──あ、あんなのその場しのぎの言葉で本心なんかじゃないんだから!
思い出したりなんかしたら…………今度こそゆうちゃんを忘れられなくなっちゃう。それにあんなに辛い別れは……もうたくさん──
後悔と自分に宿った微かな期待を溜め息に乗せて全部吐き出した私は、とりあえず洋服を着てリビングの方へと向かっていった。
今の時刻は八時少し前。
今日が休みで良かった……仕事だったら遅刻確実じゃん。
あ、でも休みだと一日中ゆうちゃんと気まずい空気が流れる?
たぶんこの時間だったらゆうちゃんもまだ寝ているだろうし……その間にどこか出かけてしまおうかな。
今日一日を外でどう過ごそうかと頭を悩ませながらリビングのドアを開けると、フワァ─と甘くて美味しそうな匂いが鼻に漂ってきたのである。