【完結】終わった恋にフラグはたちません!
◇ ◇ ◇
── “石川組”
石川組と言えば関東屈指の正統派ヤクザ集団と言われており、時折、様々な抗争がニュースに取り上げられている。
その石川組のトップである親分、石川 幸三は売られた喧嘩は買うがそれ以外、自分達からは決して手を出さないことで有名な組でもある。
それにヤクザと言えども一般市民を守るパトロール隊を組んだり、子供やお年寄りを優しく見守ったりしていて周りの市民からの信頼度は厚いものがあった。
自分はこんな世界の人達とは一生関わることはないだろう…そう思っていた。
──思っていたはずなのに、今私とゆうちゃんは顔の怖い……いかにもそちら筋の方達数名に取り囲まれている。
「ご、ごめん、ゆうちゃん」
「いや、伊織は僕の後ろに隠れてて」
こんな時でもゆうちゃんは物怖じもせず堂々としている。こういう場面を見ると、ついゆうちゃんと初めて出逢ったときのことを思い出してしまう。あの時もゆうちゃんが助けてくれて……って!
今そんな想い出に浸っている場合じゃない!
え─と、……何でこんなことになってるんだっけ、私達?
……あ─ そうか……私があの時、勢いに任せて電話したからこんなことになっているんだ。
でも、あの時は驚いた……まさか石川君があの石川組組長のご子息だったとは。
───────────……
『はいぃ! 石川組ぃ本部ですがぁ!?……もぉしもぉ─し──?』
『…………』
電話口に出たのはドスの効いた、ものすごく低く大きな声の持ち主。
まさか、そんな声の持ち主が電話口に出ようとは考えてもいなかった私は、話そうとしていた言葉が急に飛んでしまうプチハプニングが頭の中で起きていた。
『だぁれぇだ─!? いたずら電話じゃただじゃおかね─ぞ、おい!!』
更にワントーン、声が上がった所でビクッと体を震わせた私は、慌てて言葉を発しようと努力する。
『す、す、すみません! 私、高藤出版の立木と言う者ですが、そちらに石川 大和君はいらっしゃいますでしょうか?』
『……あ─、坊っちゃんの。失礼、しやした! 坊ちゃんだったら今……あ! 組長ぉ─! お疲れ様っす!!』
突如、電話口の先でモゴモゴと話し合いでも始まっているかのような様子だったが、送話口を手で押さえているのか内容までは全く聞き取れない。
そしてしばらく待っていると、先程とは違う声の主が電話に出てきたのである。