【完結】終わった恋にフラグはたちません!
◇ ◇ ◇
さすが、関東屈指のヤクザ集団 “石川組” の本部ともなると立派なお屋敷だ。
この家に着いてすぐ感じたことは、広い家であることと同時に要塞のような完璧なセキュリティ。
──純和風造りの大きなお屋敷は広い庭の中央に位置し、更にその周りは竹林が散らばり、まるでお屋敷を隠すように植えられている。
そしてそれをまた取り囲むように高い塀が聳え立つ。
外からは中が見えない構造となっており、唯一の入り口である門は弾丸さえも通さないような鉄壁さだ。
そんなお屋敷の中にある一室──見たところかなり広い、25メートルプールがスッポリ入りそうなぐらいの広い和室に、私とゆうちゃんは通された。
客間には他に組長と石川君、そして先程から組長の後ろにいる若い和服の美女が顔を揃えていた。
そして、なぜだかゆうちゃんはさっきから謎の質問をされ続けている。
「澪先生。先にうちのせがれがお世話になっていたようで、改めまして御礼申し上げる」
あれ? 先日の電話の雰囲気と違う感じ……少しは歓迎されてる?
「あ、いえ……いしちゃ、石川君はとても絵もストーリーも上手くて、僕の方こそいい刺激をもらっています」
「先生にそう言って頂けると、せがれもアシスタント冥利に尽きると言うものです。……それはそうと澪先生」
「はい」
「澪先生は現在、独身でいらっしゃいますね?」
「えっ、あ、まぁ……」
「現在、お付き合いされている女性は?」
「はぁ、いやまぁ、今はいませんけれどそのうち──」
「よしぃ!! 合格だ!」
「は?」
組長は突然、右手で自分の太股をポンッと叩きながらよくわからない言葉を言い放つ。当然、私とゆうちゃんは何が合格なのか全く検討もつかない。
組長はしばらく上機嫌に高笑いをしながら「うんうん」と何かに納得して頷いている。
「いやいや、勝手に盛り上がってすみませんなぁ! ……先生方はうちの組について少しはご存知ですかな?」
「はい。あ、でも僅かな情報しか持ち合わせておりませんが」
ゆうちゃんがそう言うと、組長は自分の胸の内を少しずつ話し始めたのである。