【完結】終わった恋にフラグはたちません!
「もうそんな、10:0なんて変な駆け引きしなくたって、その元旦那様にズバッと離婚理由、聞けばいいじゃないですかぁ─。結局はその理由によっては今後の対策だってできるかもしれないんですからぁ、先輩!」
「……そうかなぁ─、でもなんかこうきっかけがないと、その─、勇気がねぇ─」
なかなか煮え切らない私の態度にイラついたのか、お酒も大量に摂取してなのか、美鈴さんは持っていたビールジョッキをテーブルの上にドンッと力強く置いたのだ。
「なんなんですかぁ─ 先輩! 仕事の時はあんなにテキパキ動くのに、恋愛ともなるとなんでそんなに臆病風に吹かれてるんですかぁ!?」
「み、美鈴さん? 大丈……」
私がそこまで言いかけた時、突然美鈴さんが私に向かって人差し指をビシッと差し大声でこう言い放ってきたのである。
「先輩っ! 私今から先輩にとてもい─ことをお伝えします!!」
「え、は、はい?」
「元旦那様は今でも先輩のことが好きなんですよぉ、きっと!
だぁって─、考えてもみてください、普通嫌いな相手を担当に指名しますかぁ─? 一夜を共にしますかぁ─!? 」
「ちょ、ちょっと美鈴さん、声が大きい……」
「私ならしませんよぉ─絶対! ……先輩がやるべきことは今すぐ帰って元旦那様に即、告ることです!」
「え!? 今日? 今すぐ?」
「だぁって─、こうしてる間にそのお見合い相手が迫っていたらどうするんですかぁ? 断ったって言っても男女の仲はいつどうなるかわかりませんから。……とにかく先輩は当たって砕けろなんです!」
え、砕けちゃうの、私?
……でも、確かに美鈴さんの言っていることは正しいのかも。ゆうちゃんと顔合わせづらくてこんな所でウダウダと愚痴ってる間にも、積極的な亜里沙さんが行動を起こしていたら? 私はただ口に指を咥えて見てるだけ?
そんなの絶対後悔するに決まってる。──何であの時もっと勇気を出さなかったのかって……後悔する。
さっきまで弱気まみれだった私が美鈴さんの言葉に突き動かされて、なぜか変な強気のスイッチが入ってしまったようだ。
「わかった、美鈴さん! 私これからゆうちゃんにはっきりと告ってくる!!」
「その意気ですよぉ─せんぱぁ─い!」
私は二人分の飲食代をテーブルに置き、千鳥足になりながらも直ぐ様その居酒屋を後にしマンションへ急いだのだった。