【完結】終わった恋にフラグはたちません!
◇ ◇ ◇
ハァ─ハァ─ハァ─ハァ─……
なかなか息が整わない。心臓がドクドク波打っている。
これはお酒も入っているからなのか、それともまださっきの光景が頭に張り付いたままずっと心臓を掴まれているせいなのか──
マンションのエントランスを出るとすぐに、住人の憩いの場として造られたオープンスペースが設けられている。
そしてたくさんの樹木が植えられており小さな公園やベンチなども設置。暗くなったこの時間でもあちこちにヨーロッパ調の街路灯がある為、ポッと雰囲気の良い明るさが周りを包み込む。
そのオープンスペースを少し歩いた先のベンチに座った私は、何とか呼吸を整えようと大きな息を吸う。ここまで走ってきたせいもあって涙はもう止まっているけれど、目の周りが乾いた涙で突っ張ている。
ハァ─……もうこんな時間なのに、なんでまだ亜里沙さんがいるの? 断られたんだからもう諦めればいいのに。
それにゆうちゃんだって断ったって言うんだったら、何か理由つけて早く返せばいいじゃない……
──って私…人の批判ばっかりだ─。
自分が何の行動も起こせていないのに、人のせいにしてばかり……いつから私、こんな嫌な奴になったのかなぁ
ようやく普通の呼吸に戻ってきた私は、ハァ─…と最後に大きな溜め息を一つ吐く。ふと見上げると、夜空には綺麗な三日月が静かに浮かんでいた。
どこまでも広いそんな夜空をボ─と眺めながらベンチの背もたれに全体重を預けていると、何だかとても心地が良い気分になってくる。
「ハァ─…立木さん!?」
今まさに空っぽになっていた自分に突如、声をかけられ一気に我に返った私は、声が聞こえてきた方へと目を向ける。
すると、肩で息をしながらTシャツにスウェットズボンというラフな姿の石川君が心配そうに私を見つめていたのだ。
「石川君? どうしてここに…あ─……コンビニね、行こうと思ったんだけど私、鞄置いてきちゃったみたいで。本当、どこか抜けてるよね私!
そ、それにちょっと酔ってるし、もう少しここで酔いを醒ましてから帰ろうかなって思って…だから石川君は先に戻ってて、お風呂上がりだし風邪引いちゃうよぉ─」