【完結】終わった恋にフラグはたちません!

その言葉を聞いて真っ先に脳裏に浮かぶは私の大切なコレクション達……片壁面全ての本棚に大切に保管していた漫画達が全て水浸し状態──

……つーか! 一体何年かけていくらかけてあの漫画達を集めたと思っているのよ! 絶対、弁償させてやるぅ!

今さっきのやり取りを思い出しては、再度怒りが込み上げてくる。

『──とりあえず、部屋を修繕するのに最低でも一カ月はかかるとのことですので……申し訳ないのですがその期間、他の部屋に移ってもらえると助かります。 あ、わたくし達が所有する物件でもよろしいのですが……あいにく今、空いている物件が全て郊外の物件でして』
『あ─、じゃあいいです。自分でどこか探しますので。何かあったらすぐに連絡ください』

出版関係の仕事は不規則で帰りが遅い。
少しでも睡眠を確保するため会社から近いこの物件を選んだのに、一カ月以上も郊外の物件になんて住んでられない。

友人達の電話番号を確認するため、鞄からスマホを手探りで取り出す。
親指でスクロールしながら今まで友人や知人になった者達の名前に見入っていたが、途中から自然と溜め息を吐いている自分に気づく。この中で唯一仲の良い友人達は皆、既婚者で子供もいる。──泊まらせてくれと頼めるわけがない。

友人達への連絡は諦めて電源を落とした私は、スマホを雑に鞄の中へ放り投げた。
そして水が滴り落ちる部屋の中へ入り、とりあえず必要最低限のものだけスーツケースに押し込むと、一旦繁華街の方へ戻ることにしたのだ。

── あ─、瞼がすごく重い……一気にいろんなことがありすぎて疲れがピーク。あぁ、でも、まだイベントの為に頑張れる……今後のことはまた明日、考え、よ……う

今まで抱えていた怒りモードが眠気と共に段々と緩和され、私は瞬く間に深い眠りへと落ちていった。

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