【完結】終わった恋にフラグはたちません!
──って、私の言葉じゃないですよ!
無意識に飛び出したはいいけれど、同時にその鬼気迫る声に私の足は立ちすくんでしまったのだ。
そして声が聞こえた先に目を移すと、亜里沙さんの彼氏さんが走りながら二人に近づいていっている。
もう周りが見えていない様の彼氏さんは、今にでもゆうちゃんを殴りかかりそうな勢い。
「亜里沙ちゃんを離せっ──!!」
「ま、まぁくん!?」
ま、まずい! このままじゃゆうちゃんが殴られちゃう──
私の足が再び動き出しゆうちゃん達の方へ全速力で向かって行く。
間に合うか間に合わないかはわからないけれど、それでも私はゆうちゃん目掛けて走った。
そもそもこの作戦は私が思いついて実行したこと、ましてやゆうちゃんに怪我なんてさせられない。
「ゆうちゃん! 危ないっ!」
「伊織!?……君は来ちゃ──」
ガンッ!!
──次の瞬間、私の意識はどこかへと吹っ飛んでしまった。
あぁ、本当に、ベタな漫画のストーリーでも見ているかのよう…彼氏さんが思うように動いてくれて良かった。
これで亜里沙さんと上手くいけばいいなぁ……でも私って漫画で言えばどんなポジション?
好きな彼を助けるヒロイン? それともモブキャラ?
あぁ……でも、殴られるのはちょっと……想定外…だったか、も……
殴りかかろうとした彼氏さんとゆうちゃんの間に横入りした私。
それに気がついた彼氏さんは「え!?あ…」と呟きながら、振りかざした拳を必死に止めようとしたがその勢いはすぐに止められるもんじゃない。
そのまま拳が頬に直撃した私は地面に倒れ込んでしまったようだ。
「伊織っ!! おい、伊織!」
「立木さん!」
耳の奥でエコーでもかかったように次々と皆の声が聞こえてきたが、それも徐々に聞こえなくなっていく。
私はいつの間にか意識を失い、その後の状況は何もわからなくなってしまった。