【完結】終わった恋にフラグはたちません!

◇ ◇ ◇

間もなく十八時。
最近は少なくなったが、昔みたいに芸能人がよくしていた派手な結婚披露宴会場みたいな大広間。
各テーブルには豪華な料理やお酒を配置し、自由に手に取れるようになっている。そして会場には既に各関係者など三百人ほどの招待客が顔を揃えていた。

そんな広い会場の隅っこでフォーマルな装いに身を包んだ僕は、他の招待客に気付かれないよう隠れて大きなあくびを一つする。
──が、その眠気を突っ込む者がただ一人。

「なんだ、ゆう! やけに眠そうだなぁ、昨日は伊織と遅くまでお楽しみだったのか!?」

会うのは結婚式以来だが…相変わらずデリカシ─のない奴だ。……まぁ、でもこの陽気な明るさに誰もが取り込まれてしまうのはなぜかの領域、かく言う僕も昔はその内の一人だった。
──だけど、まさか司と義兄弟になるとは思ってもいなかったけどね。

「いいだろ、別に。僕は伊織が愛おしくてたまらないんだから。…それより、なんで司までこの会場にいるわけ?」
「俺は─、あれだ。あの商品の容器は俺の会社で作ってるから、それで招待されたんだよ」
「でも確か担当は浅川さんだったはずだよ」
「あ─、浅川さんね。彼女、急に子供が熱出しちゃって僕が代わりに来たってわけ。……それに、今日はあの高光 杏もこの会場に来てるんだろ─? 俺、最近あの子のファンなんだよね─」

あぁ、司の目当てはそれか。
急遽来れなくなった浅川さんの代わりに自分から進んで来たんだな。
かれこれもう六年以上の付き合いになる司の性格や行動は、ある程度把握しているつもりだ。

──ったけども、その後の司の発言は予想外のものとなった。

「ゆう。俺、仕事辞めることにした」

突然の司の退職発言に僕は目が点になる。それは今まで会社を辞める素振りも何も司は見せていなかったからだ。

「はぁ!? 何だよそれ? 仕事辞めて何するの。それに彼女にはなんて……」
「彼女とは三か月前に別れちまったんだよぉ─! …だからさぁ、もうこの機会に自分のやりたいことをしようって決断したってわけ」

え、司、彼女と別れたのか? なんだかんだ言って長かったよな……

< 85 / 110 >

この作品をシェア

pagetop