【完結】終わった恋にフラグはたちません!
「司のやりたいことって?」
「冒険家!」
「冒険、家……?」
全く思ってもいなかった言葉が司から飛び出してきた。驚きすぎて反対に冷静になってしまう。
「そう! 全世界飛び回ってボランティアとかまだ見ぬ地へ赴いたり……世界が広がるだろうな─! …一か月後にはまずベトナムにでも行こうと思ってる」
「一か月後!? やけに早いな、伊織やお義父さん達は知ってるのか?」
「いや、まだ言ってねぇ。親父に言ったらぶっ飛ばされるの目に見えてるからな─」
……だろうな。伊織と司のお義父さんは昔気質な人でもあり、僕も伊織との結婚承諾のため挨拶に行ったときはめちゃくちゃ緊張したもんな─。
伊織も結婚するにはまだ若い年齢だったし、最初は反対されるのを覚悟で伊織の実家に行ったけれども……意外とあっさり了承してくれたから少し拍子抜けしたのを覚えている。
「だから今日は日本で最後の派手な宴として、ファンの杏ちゃんに生で逢っておこうと思ってな!」
「仕事を私用に利用するな」
「え─、いいじゃんかよぉ─、後で紹介してくれよぉ。
……それにさ、気づいてるか? さっきから綺麗な芸能人っぽい女の子達がお前のことチラチラ見ていること。伊織には黙ってておくから、お前も今日は少し羽目外しちゃってもいいんじゃないの」
「くだらない。僕は伊織しか見えてないから余計なお世話だぞ、司」
「あ─、はいはい……相変わらず仲良いのな、お前達」
突然の退職宣言、冒険家宣言に驚きつつもどこかで司にはそういう自由な生き方のほうが合っているのではないかと思っていた。
帰ったら伊織にもこのこと伝えておかないとな…司が行ってしまってから知ったんじゃ皆が心配するだろうし。
そして、そんな二人の会話を遮るよう、急に会場が暗くなったのと同時に今回のお披露目会は始まったのである。