【完結】終わった恋にフラグはたちません!
◇ ◇ ◇
まるで、長かった眠りから目覚めるような感覚。
自分の瞼がとても重い…意識は起きかけているのに瞼がなかなか開いてくれない。
それでもようやく少しずつ開いてきた瞳の中に差してくるのは明るい陽光──それはとても眩しくて右腕で咄嗟に目元を覆ってしまうほど。
頭が重いしボ─とする……もう、朝なのか?
明るい陽光にも瞳が慣れ始めてきた頃、僕はいつもとは違う違和感に気付き始めていた。
天井がいつもと違う? ……あれ…僕は昨日、確か………
髪をくしゃくしゃっとかきあげ、一呼吸置いてからゆっくりと上半身を起き上がらせ辺りを見渡す。
そこは自分の家ではなくどこかのホテルのスイートルームみたいな場所。かなり豪勢で広さのある部屋だ。
僕は昨日のことを必死に思い出そうとしても思い出せない……最後に残っている記憶は高光さんと一緒にお酒を飲んだことぐらい。
それによくよく見ると、下着は身に着けているものの自分の上半身、下半身共が裸だったのである。
一瞬、僕の思考が全て停止。しかし、次の甘い声によって、僕の意識が悲惨な状況へと連れ戻されてしまう。
「三栗谷さん、おはようございますぅ」
その声に反応して恐る恐る横に目を向けると、そこには裸で布団に包まれた高光 杏が横たわっていたのである。
状況を全く把握できない僕に尚も、彼女は話しかけてくる。
「三栗谷さんてぇ、夜も紳士なんですね。……私、昨日の夜のこと一生忘れないかも」
はぁ? ……頭が混乱する、彼女は何を言っているんだ?
「あれぇ─、もしかして三栗谷さん、何も覚えていなかったりします?
昨日は私のことあんなに求めてくれたのに─…何度も好きだって言ってくれたんですよぉ─」
「……………」
僕は彼女の言葉を聞いた途端、急いでベッドから起き上がり近くに散乱してあった自分の洋服を着始めた。
「三栗谷さん、何でなにも言ってくれないんですか。人に乱暴しておいて無視ですか?」
先程までの甘い猫なで声とは違い、高光 杏は明らかにトーンの下がった少しきつめの話し方に変貌し始める。
「……それ、噓でしょ。僕が君を抱くなんてあり得ないし好きなんて言うはずもない」
「そんなの…記憶もないのに何でわかるの!? 男なんて目的は皆一緒、ヤリたいだけの生き物じゃない。奥さんがいたってそんなの関係ないわよ」