【完結】終わった恋にフラグはたちません!
第二十話 ☆ 告白【弐】

「……なに…それ」

八年間、心のどこかでずっと引っかかっていた離婚の真相。
ゆうちゃんの話しを全て聞いた私の第一声はそんな言葉だったのである。

──全ての真相を知った今、私の心の中には何も知らなかった自分への空虚感、その女性に対しての怒り、何も話してくれなかったゆうちゃんへの苛立ち……いろんな感情が沸き上がっていた。

「え…ゆうちゃんはそれで私と離婚したの? …離婚してその女性の所に行ったの?」
「違うよ伊織! 行くわけがない……僕には伊織しかいないのに」

ゆうちゃんはそれを全否定し、離婚後のことも話してくれた。

「──伊織に何かあるといけないと思って一旦は離婚と言う形を取ったけど、ほとぼりが冷めたら……本当に勝手なんだけど、その時は全部話してまた伊織を迎えに行こうと思っていたんだ」
「そんな……じゃあ、何でゆうちゃんと再会するまでこんなに時間がかかったの?」
「それは……その後、僕は仕事を辞めて最初は生活基盤もまだ(まま)ならない状態だったから、やっと生活も整って迎えに行った時には既に伊織も仕事を辞めて住所や連絡先も変わってて。
海外に行っている司とは連絡取れないし、何度か伊織の実家にも行ったんだけどお義父さんに追い返されてしまって……まぁそれは当たり前のことなんだけどね」

嘘、そんなゆうちゃんが来ていたこと…お父さんから一度も聞いたことなかったんですけど!?

「はぁ─……そう、だったんだ……あ、でもその女性とは?」
「離婚後、高光さんの要求には応じなかったから最初は様々な嫌がらせも受けたけど、商社を辞めてしまってからはパッタリ。彼女はきっと僕じゃなくてもスペックの高い肩書きを持つ男性が欲しかっただけなんだよね」

八年前の真相を全て聞いてハァ─と大きな溜め息と共に、自分の体から一気に力が抜けていく感覚に私は陥っていた。
もしかしたらゆうちゃんに嫌われたのかも、私の何がいけなかったのか……ずっと自分を責めていたそんな想いが全て溶け出していくようだった。

「──でも…ゆうちゃんも何でその時に話してくれなかったの? もし話してくれてたら、何も離婚までしなくたってよかったんじゃ」
「僕も何度か言おうと思ったけど……もし言ってたら伊織、どうした? 彼女のところに乗り込む勢いだったんじゃない」
「そりゃ…そんな脅しに屈したくないし…」
「だと思ってね。伊織をあまり巻き込みたくなかったし、相手はあまりいい噂を聞かない暴力団だ。……やり方は間違っているかもしれないけれど、僕は伊織を守りたかった」

あの時…離婚を言い渡されてから、好きだった故に少しゆうちゃんを恨んだりした時期もあった。──でも、本当はゆうちゃんが影で私のことを必死に守ろうとしてくれてたなんて、思いもしていなかった。

……こんな私は…またゆうちゃんを好きになる資格などあるのだろうか?

知らなかったとはいえ、ゆうちゃんを信じきれなかった戒めの言葉が自分へとのし掛かってくる。

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