【完結】終わった恋にフラグはたちません!
第二十一話 ☆ 作戦会議
高光 杏。
以前、ゆうちゃんと色々あった時はまだタレントとしてテレビやコマーシャルなどに出始めたばかりの頃。それでも次々と大口案件のコマーシャルなどに大抜擢され、一気に世間の知名度を上げていった。
そして、数年前からはドラマなど女優活動にも範囲を広げ、現在ではタレントというよりも女優業を主とした活動を行っている。
「え─、でもこの高光 杏ってめっちゃ大根ですよ。こんな人が澪先生の漫画のヒロイン役なんてあり得ないんですけど!」
ブーブー文句を言いながら亜里沙ちゃんは目の前の紅茶を一口ゴクンと口に含む。
ここは、ゆうちゃん家のリビング──
入院するほどではなかった私は目を覚ました後、再度診察をして家に帰ってきたのだ。もちろん念の為に今日は会社をお休みさせてもらったのだけれども。
それになぜだか、今このリビングには結構な人数のギャラリーがある議題について、自称 “対策会議” というものを催している。
会議の参加者はゆうちゃんに私、石川君に律君、双葉ちゃん……それに漫画の読者目線として亜里沙さんも加わっていた。
「大根はともかく、確かに澪先生……高光 杏はこの漫画のヒロインとはちょっと雰囲気が違うと思うんっすけど」
石川君も彼女のプロフィール写真を見ながら、亜里沙さんの意見に賛同した形で澪先生に進言する。
高光 杏は女優と言っても周りからの評価はかなり低い。女優生命もちょっと危ないのではと巷では囁かれているのだ。
「ん─、でもそのヒロイン役と相手役との対談はもう五日後に迫っているからね─」
「そもそも、澪先生にも決定権はあるんじゃないっすか……今回のこと澪先生はご存知なかったんですか?」
「うん、ヒロイン役はまだオーディション中だったし、まきちゃんからは二人の候補者に絞られたということしか聞いていなかったんだ」
そんなこんなで圧倒的に高光 杏はこの漫画のイメージに合わないという意見が多いなか、突然私のスマホの着信音が鳴り響く。
「はい、立木ですが…あ、編集長お疲れ様です。今日は急にお休みをもらってしまいすみませんでした。明日は出社し……え?……そ、そんな急に…澪先生の予定もありますし…………は、い…わかりました、聞いてみます」
通話を切った途端、周りに人がいるのも忘れて私は重い溜め息を豪快に吐いてしまった。
不安な気持ちが頭をクラクラさせる上に少し吐き気がしそう。
そんな私を見て当然、何かあったんだと皆の目線が私に集中してくる。