【完結】終わった恋にフラグはたちません!
「編集長、何か言ってきたの?」
「澪先生……。あの、高光 杏の事務所から連絡が入ったみたいで……対談の前に一度、澪先生とお食事も兼ねてお会いしたい、と……」
「いつ?」
「明後日の十八時、ウェスティンホテルで食事を……」
「…うん、わかった、行くよ」
「澪先生!? …少しは立木さんの気持ちも──」
石川君のその先の言葉を遮るようにゆうちゃんはパンッと手を一回叩き、お開きを促すような合図をする。
「さあ、今日の仕事はりっちゃんと双葉ちゃんが頑張ってくれたからもうあまり残ってないし、後は僕がやっておくから、久しぶりに皆早く帰って休んでね」
そう言って、ゆうちゃんは一人仕事部屋へと戻って行った。そしてそれを境に他の皆も次々へと家路に帰り出す。
私はと言うと──気付くとさっきからずっと手が震えている。
何でまた今頃になって、私達の仲を搔き乱した張本人が現れるわけ。
……やっと今日…ゆうちゃんとわかり合えたばかりだと言うのに…また、高光 杏は私達を乱しまくるの?……────
──── あ──……って言うか! 何で私、そんな逢ったこともない女にビビらされなきゃいけないわけ!
何が斑目組の娘よ! それが何なのよ! 斑目組なんかより石川組のほうがよ──っぽど………………あ。
最初は高光 杏に対して恐怖心や不気味さがあったけれども、八年前やこの八年間のことを考えていたら何だか段々と腹立たしい気持ちの方が強くなっていった。そして、ゆうちゃんの告白を聞いてから私の頭の中にずっとあったある引っ掛かり──。
「……立木さん? 大丈夫っすか。…俺、さっき病室で澪先生と立木さんの話しを立ち聞きしてしまって。でも、澪先生も何でまた一人で高光 杏に逢いに行こうと……」
「石川君!!」
私を心配してか一人残っていた石川君に私は咄嗟に大きな声で呼びかける。
そして無理を承知で石川君にある話しを振ってみたのだった。