【完結】終わった恋にフラグはたちません!
◇ ◇ ◇
「家の者に少し調べさせたらすぐわかりましたよ。…高光 杏がここまでのし上がってきた裏事情が」
仕事が終わった後、一昨日と同じカフェ “アクア・ビストロ” で亜里沙さんと待ち合わせをした私は、A四サイズほどの封筒に入った数枚のレポート用紙を受け取っていた。
私がそのレポート用紙に書かれた内容を把握中、亜里沙さんはアイスコーヒーにささるストローをクルクルと回しながらずっと怒っている。
「お兄ちゃんから話しを聞いた時はめちゃめちゃその女に腹が立ちましたよ! それもその芸能経歴は全て裏で手を回して奪ったものだったなんて」
ゆうちゃんに離婚の真相を聞いてから、なんだかずっと心の奥底で引っ掛かっていた違和感。
普段、酔う飲み方なんてしないはずのゆうちゃんが高光 杏と飲んだ時に限って、眠りこけてしまうほど酔ってしまうなんて……少しおかしいと感じていた。
……まさかとは思ったけれど、この調査報告書を見る限り私の違和感は間違っていなかったみたい。
──ゆうちゃんはきっと、悪質なハニートラップ的な網に捉えられてしまったんだ。
その引っ掛かりが元で、無理を承知に高光 杏のことを調べたいと石川君に相談したことが今回、皆が集まるきっかけとなった。
でも…さすが関東一大きな組織 “石川組” ……たった一日で、彼女の裏情報をここまで集められるとは──
目を通した調査報告書によると高光 杏は、芸能活動を始めてから短期間で多くの大口案件と契約している。
オーディションで勝ち取ったということにはなっているが、最終選考に残った者達はなぜか皆、その直前に辞退を申し出るという摩訶不思議なことが起きていたのだ。
ある程度、報告書を読み終えた私達の元に石川君、律君、双葉ちゃんの三人が合流。
律君が自分なりに調べてきた結果を教えてくれた。
「僕っちも芸能界にいる友達に高光 杏のこと聞いてきたよ!」
「え?! …律君って芸能界に友達いるの?」
「はいっ! 僕っち、交友関係広いんだ。──芸能人の他にも弁護士や医者、警察官、受付嬢やキャバ嬢……などなど、色々かな─」
弁護士?! キャバ嬢?……律君って一体何者? 陽キャだけでこんなに交友関係って広いもの?
思ってもいなかった律君の陽キャ故の交友関係の広さ──私は只々、驚くと共にそのコミュ力の高さが羨ましいと思うしかなかった。
「──で、芸能界にいる友達っていうのが今、俳優やっていてその若手俳優の中でも結構、噂になってるらしいんだ」
「噂って!?」
亜里沙さんと双葉ちゃんの女子陣営達が前のめりになって、早く続きを聞き出そうと律くんを急かし始める。