【完結】終わった恋にフラグはたちません!
第二十二話 ☆ 悪女再び


──ゆうちゃんと再会してからの日常は、私にとって非日常の連続だった。

離婚してからの私は女性としての自信が持てなくなり、恋愛はいつもすれ違う他人の恋模様を想像することで満足していた。
漫画だけの世界に逃げ、誰とも距離を縮めず女子力もなくしていった。
それがゆうちゃんとの再会をきっかけに色んな歯車が動き始めていく──


「──うわぁ……めっちゃ綺麗。伊織っち、どこにそんなスペック隠し持ってたの!?」
「律君、立木さんに失礼っ! 立木さんは背も高いしスタイルもいいから、少しいじればメチャクチャ美人さんになるんだから。……それにお兄ちゃんもさっきから見惚れてないで」
「べ、別にみ、見惚れてなんか……」

亜里沙さんの言葉に慌てふためいた石川君は、中途半端な言葉を残しその場を離れていく。
私はと言うと、結婚式以来じゃないかというぐらいのお洒落を亜里沙さんにしてもらっているのだ。

少しボディラインを強調した淡いベージュ色のナチュラル感漂うレース裾フレアワンピースに、両耳にかけたショートヘアー、耳には長めに連なったダイヤのピアスがゆらゆらと揺れている。それにクール&プリティさを感じるメイクアップ。

「な、なんか恥ずかしいな…さっきから他の人達にもチラチラ見られてる感じだし。どこか変なんじゃ……」
「違いますよ! 皆、さっきから立木さんのことを見惚れてるんです。もっと自信持ってください!」
「は、はぁ…」

なぜ私が今、このような格好をしているのか。それは昨日、亜里沙さんが考えたある作戦がきっかけとなっている──



『──で、きっと今回も高光 杏は澪先生を誘うつもりなんですよ。以前と違って今回は澪先生、結婚もしていないしハードル低めだから小細工なしにストレートに誘ってくるんじゃないかなって』
『確かに、以前はイケメンプラス商社マンという肩書があったけれど、今回は漫画家として澪先生は成功しているからな─。
彼女はそのスペックの良さにまた惹かれたのかも……だから二人っきりで食事なんか』

知れば知るほど条件の良い男性にたかる女郎蜘蛛みたいな女性だ。

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