【完結】終わった恋にフラグはたちません!
◇ ◇ ◇
──再び、ウェスティンホテル
律君と双葉ちゃんから、楽しそうな雰囲気に見えるゆうちゃんと高光 杏はそろそろ食事をし終えて、最上階にあるバーへ向かうみたいだという連絡が入った。
その “楽しそうな” という言葉に胸が少しチクンとする。
正直、私もゆうちゃんがなぜ今回わざわざ彼女の誘いにのったのかわからない。もしかしたらまた一人で対処して私の前から消えてしまうのではという不安も無きにしも非ず。
でも、今回は信じきれなかった八年前とは全く状況が違う。
──私はもう何があってもゆうちゃんのことを信じると決めたのだ。
二人からそのような連絡が入り、私達三名は急いで最上階のバーへと先回りをし、バーの中でゆうちゃん達に見つからないよう待機しておく。
そして私達がテーブルについたその直後、バーの前に位置するエレベーターの扉が開き、ゆうちゃんと高光 杏が降りてきたのである。
彼女は確か私と同じような歳だったはず──けれど、年甲斐もなく若いコギャルみたいなメイクに茶髪のロングストレート、赤色のボディコンみたいな派手な装いをしている。
正直……あまり似合ってはいない。
そして二人は窓際に沿って置いてあるテーブルへ案内され、そこは夜景を目の前にしてお客同士が並んで座るような形状となっていた。このバーは最上階に位置するだけあって、夜景がとても綺麗に見える。
私達は小声かつ顔を伏せ気味にしながら店員さんに席の移動を申し立て、ゆうちゃん達になるべく近い席にコッソリ移動。
音量低めに静かなバラードの曲が流れているからか、聞き耳を立てているとゆうちゃん達の会話がなんとか耳に流れ込んできた。
「──でも澪先生の本名聞いて驚いたわ。まさか三栗谷さんが漫画家になっていたなんて。三栗谷さんの原作ドラマに私がヒロイン……これって運命、感じません?」
いや、全く感じませんしぃ─。そもそも自分の実力で勝ち取ったわけじゃありませんよね、あなた!
「…そうですね。高光さんもあれから女優さんになってご活躍されているそうじゃありませんか。先程、山上さんに伺いましたよ。山上さんとは随分長いお付き合いなのですね」
少し含みのあるような聞き方に、高光 杏は少し動揺する素振りを見せる。