チャラ男の本気は甘すぎる
店を出て上月さんたちに手を振ったら
片倉くんが『さっさと行くぞ』って歩き出した。
片倉くんの隣に並んで、でも一歩後ろを歩く。
片倉くんはそれには何も言わず、ポケットに手を突っ込んで猫背になりながら歩いていた。
「そういやおまえ、紫央んちのパン屋行ったことある?」
「……あ、はい…一度だけ…」
「家、そっち方向なの?」
「いえ、全然…
紫央くんの家は結構離れてます」
「……まぁそっか。そっち方面なら中学の校区一緒だろうしな。
そういえばおまえは徒歩通学だったよな。
学校に近い方なんだ?」
「…あ、はい。そうです」
片倉くん、もう私に興味なんてないと思ってたのに
歩きながらいっぱい話してくれる。
でも、私は会話を上手く弾ませられない。
片倉くんに対しては、入学式の日からあんまり変わってない。