チャラ男の本気は甘すぎる
涙が滲んできて、ゴシ、と目を擦った時。
「……憂莉?」
自分の声なんじゃないかってくらい聞き慣れた声が、私の名前を呼んだ。
「笑莉…」
「……え、
天音が2人…」
「……おい」
笑莉の声が低く響いた瞬間、
笑莉が持っていたカバンをぶんまわして、
片倉くんの顔にゴスッ!!と命中した。
「てぇ!!」
「憂莉に触るなドクズ野郎」
よろけて頬を押さえる片倉くんに向かって、笑莉がそう吐き捨てる。
笑莉は私の手を掴むと、
「憂莉、帰ろう」
片倉くんを置いて、強引に私を引っ張って歩き出した。
「え…笑莉、なんで…」
「寄り道してて、帰ってたとこ。
睦月紫央の他にも、男友達がいたの?」
「……ううん、友達じゃ、ない…」