初恋ディストリクト
「そんなことない。僕は栗原さんを見てからずっとドキドキしてるけど」
「やっぱりそれって、初恋の人と私が被っちゃってるから?」
澤田君はこの質問に少し考え込んだ。
言葉を選んでいるようで、困っているようで、私がじっと見つめて答えるのを待っているから答えないといけない焦りもでて、ようやく出てきた声は「うーん」だった。
「やっぱり被ってるんだ。初恋の人の事を考えてるんだ」
勝手に判断して私が代わりに答えた。
「あのね、どう答えていいのかわからないんだけど、栗原さんのいうことは一理ある。それだけじゃないんだ」
「どういう意味?」
「うーん」
また唸っていた。
澤田君は答えるのを渋っているのか、本当にどう答えていいのかわからないのか、多分後者だろう。そしてやっと口を開いた。
「僕が勝手に初恋の人に似てるなんて言ってごめん。やっぱり初対面でそんなこと言われたらびっくりするよね」
「それはそうだけど」
ある程度澤田君の人柄を理解すると、今となってはそんなに悪い気がしない。
それってすでに好かれている近道というのか、私を意識する要因になっている。
私だって、それがあるから急に告白されたみたいな錯角に陥った。
初恋の人に似てるや、元カノに似てるって、一度好きになった人に似ているっていう言葉は接着剤のように突然強力にくっ付いてしまう力を持っていると思う。
人間じゃなくても、以前飼っていた犬に似てる、猫に似てる、そういうペットの写真を目にした時、共通点があれば誰だってそう思う。
死んでしまったペット のクローンだってわざわざ作るような時代になってしまったくらいだ。
最初に好きになったものからそれに似ているものに執着するのは人間の本能なのだろう。
好みは体に刷り込まれて無意識に繰り返される。
「正直、栗原さんを見たとき、僕の初恋の人が現れたんじゃないかって、一瞬思ったのも確かなんだ。でもそれはありえないことだってわかってたんだけど、栗原さんを見るといてもたってもいられなくて、それでつい声を掛けてしまった。まさかこんな状況になるなんて思ってもなかったけど、もしかしたらやっぱり僕のせいなのかもしれないね」
急に後悔して、澤田君が悩み出した。
「一体、初恋の人と何があったの?」
何か言えないわけでもあるのだろうか。
「本当に僕たちの間には何もなかった。ただ遠くから見てるだけの存在。だから声を掛けなかったことをとても後悔した。もし声を掛けてたら何かが変わったんじゃないかって、いつもいつも思いながら過ごしてた」
「そんなに好きだったんだね。やっぱり純情なんだ」
「そうじゃないんだ」
珍しく澤田君は取り乱した。
「やっぱりそれって、初恋の人と私が被っちゃってるから?」
澤田君はこの質問に少し考え込んだ。
言葉を選んでいるようで、困っているようで、私がじっと見つめて答えるのを待っているから答えないといけない焦りもでて、ようやく出てきた声は「うーん」だった。
「やっぱり被ってるんだ。初恋の人の事を考えてるんだ」
勝手に判断して私が代わりに答えた。
「あのね、どう答えていいのかわからないんだけど、栗原さんのいうことは一理ある。それだけじゃないんだ」
「どういう意味?」
「うーん」
また唸っていた。
澤田君は答えるのを渋っているのか、本当にどう答えていいのかわからないのか、多分後者だろう。そしてやっと口を開いた。
「僕が勝手に初恋の人に似てるなんて言ってごめん。やっぱり初対面でそんなこと言われたらびっくりするよね」
「それはそうだけど」
ある程度澤田君の人柄を理解すると、今となってはそんなに悪い気がしない。
それってすでに好かれている近道というのか、私を意識する要因になっている。
私だって、それがあるから急に告白されたみたいな錯角に陥った。
初恋の人に似てるや、元カノに似てるって、一度好きになった人に似ているっていう言葉は接着剤のように突然強力にくっ付いてしまう力を持っていると思う。
人間じゃなくても、以前飼っていた犬に似てる、猫に似てる、そういうペットの写真を目にした時、共通点があれば誰だってそう思う。
死んでしまったペット のクローンだってわざわざ作るような時代になってしまったくらいだ。
最初に好きになったものからそれに似ているものに執着するのは人間の本能なのだろう。
好みは体に刷り込まれて無意識に繰り返される。
「正直、栗原さんを見たとき、僕の初恋の人が現れたんじゃないかって、一瞬思ったのも確かなんだ。でもそれはありえないことだってわかってたんだけど、栗原さんを見るといてもたってもいられなくて、それでつい声を掛けてしまった。まさかこんな状況になるなんて思ってもなかったけど、もしかしたらやっぱり僕のせいなのかもしれないね」
急に後悔して、澤田君が悩み出した。
「一体、初恋の人と何があったの?」
何か言えないわけでもあるのだろうか。
「本当に僕たちの間には何もなかった。ただ遠くから見てるだけの存在。だから声を掛けなかったことをとても後悔した。もし声を掛けてたら何かが変わったんじゃないかって、いつもいつも思いながら過ごしてた」
「そんなに好きだったんだね。やっぱり純情なんだ」
「そうじゃないんだ」
珍しく澤田君は取り乱した。