初恋ディストリクト
「感じ方は人それぞれだから。へへへ」
澤田君は笑いで誤魔化していた。
「澤田君とそのカジモトさんだけど」カジモドだった、まあいっか。トもドもどっちでもいいや。
「えっと、ピュアなところは的を射ているかもね」
澤田君の出してきたチョイスに圧倒されてしまって、どう対応すればいいのか、私も「へへへ」と最後はヘラヘラしてしまった。
澤田君を知ろうと思って質問したけど、益々謎めいてしまった。
「あのさ、澤田君の好きな食べ物って何?」
「何でも食べるよ」
「だから、その中で一番好きなものは?」
澤田君はまた考え込む。独り言を呟きながら、頭の中にはいっぱい食べ物がつまっている様子だ。
「あれも好きだし、これも好きだし……」
「だからひとつじゃなくてもいいから、思いつくままなんでも言ってみて」
「それじゃ、アルティメットおにぎり」
「えっ、何、それ? おにぎり?」
「名前は母がつけたの。見掛けはおにぎりなんだけど、中身がすごくて、だから究極のおにぎりっていう意味」
「なんの具がはいってるの?」
「ちょっと想像してみて? 何が入っていると思う?」
「えっと、なんだろう。アルティメットって……うーん、どうしてもアルミニウムしか思い浮かばない」
「なんでおにぎりにアルミニウムなの。ハハハハハ」
澤田君に受けた。
ちょっと嬉しい。
「それじゃヒントちょうだい」
「四種類の何かをご飯に混ぜるの」
「混ぜご飯か。じゃあ、ふりかけ四種を混ぜるってことかな」
「違う、違う。ちゃんとした具」
私はいろいろと言ってみた。
「鮭、わかめ、おかか、高菜、昆布、ツナ」でも全て外れた。
「じゃあ、梅干し。でもこんなの当たり前すぎるよね」また不正解だろう。
でも澤田君は嬉しそうに拍手した。
「当たり。梅干は正解。詳しく言えば、はちみつ梅が合う。それをペースト状にするの」
「なんだ、梅干しでいいのか。それじゃ、あと三つは何を入れるの? もうギブアップ」
ひとつ当てたから、そろそろ答えが知りたい。
「残りは、ゴマとほうれん草とパルメザンチーズ」
「えっ、何その組み合わせ。それでおにぎり作るの?」
ゴマとほうれん草はともかく、梅干とチーズが一緒に入ってるなんてびっくりだ。
「これが意外と合うんだよ。小さい頃ほうれん草を嫌がった僕に、母が工夫して作ってくれたおにぎりだった。海苔で包んでたから中身がわからなくてさ、知らずにそれを食べたらすごく美味しくて病み付きになった。それから嫌いなものでも組み合わせたら美味しくなるんだって、好き嫌いなくなったんだ」
「へぇ、今度作ってみよう。澤田君のお母さんって料理が上手そうだね」
「うん、おいしいよ。だから、好きな食べ物って、ひとつにしぼれなくてさ、だけどアルティメットおにぎりは僕の好き嫌いを失くすきっかけを作ってくれたから、やっぱり特別な食べ物だね」
「こんな話をしてたらかなりお腹が空いてきた」
「ほんとだ、昼の一時過ぎてる」
スマホを取り出して澤田君は時間を確認していた。
「もうここに閉じ込められて二時間以上経ってるんだね」
折角ふたりで楽しい会話をしていたのに、商店街を見渡せばまた不安が押し寄せる。
本当にここから出られるのだろうか。
澤田君は笑いで誤魔化していた。
「澤田君とそのカジモトさんだけど」カジモドだった、まあいっか。トもドもどっちでもいいや。
「えっと、ピュアなところは的を射ているかもね」
澤田君の出してきたチョイスに圧倒されてしまって、どう対応すればいいのか、私も「へへへ」と最後はヘラヘラしてしまった。
澤田君を知ろうと思って質問したけど、益々謎めいてしまった。
「あのさ、澤田君の好きな食べ物って何?」
「何でも食べるよ」
「だから、その中で一番好きなものは?」
澤田君はまた考え込む。独り言を呟きながら、頭の中にはいっぱい食べ物がつまっている様子だ。
「あれも好きだし、これも好きだし……」
「だからひとつじゃなくてもいいから、思いつくままなんでも言ってみて」
「それじゃ、アルティメットおにぎり」
「えっ、何、それ? おにぎり?」
「名前は母がつけたの。見掛けはおにぎりなんだけど、中身がすごくて、だから究極のおにぎりっていう意味」
「なんの具がはいってるの?」
「ちょっと想像してみて? 何が入っていると思う?」
「えっと、なんだろう。アルティメットって……うーん、どうしてもアルミニウムしか思い浮かばない」
「なんでおにぎりにアルミニウムなの。ハハハハハ」
澤田君に受けた。
ちょっと嬉しい。
「それじゃヒントちょうだい」
「四種類の何かをご飯に混ぜるの」
「混ぜご飯か。じゃあ、ふりかけ四種を混ぜるってことかな」
「違う、違う。ちゃんとした具」
私はいろいろと言ってみた。
「鮭、わかめ、おかか、高菜、昆布、ツナ」でも全て外れた。
「じゃあ、梅干し。でもこんなの当たり前すぎるよね」また不正解だろう。
でも澤田君は嬉しそうに拍手した。
「当たり。梅干は正解。詳しく言えば、はちみつ梅が合う。それをペースト状にするの」
「なんだ、梅干しでいいのか。それじゃ、あと三つは何を入れるの? もうギブアップ」
ひとつ当てたから、そろそろ答えが知りたい。
「残りは、ゴマとほうれん草とパルメザンチーズ」
「えっ、何その組み合わせ。それでおにぎり作るの?」
ゴマとほうれん草はともかく、梅干とチーズが一緒に入ってるなんてびっくりだ。
「これが意外と合うんだよ。小さい頃ほうれん草を嫌がった僕に、母が工夫して作ってくれたおにぎりだった。海苔で包んでたから中身がわからなくてさ、知らずにそれを食べたらすごく美味しくて病み付きになった。それから嫌いなものでも組み合わせたら美味しくなるんだって、好き嫌いなくなったんだ」
「へぇ、今度作ってみよう。澤田君のお母さんって料理が上手そうだね」
「うん、おいしいよ。だから、好きな食べ物って、ひとつにしぼれなくてさ、だけどアルティメットおにぎりは僕の好き嫌いを失くすきっかけを作ってくれたから、やっぱり特別な食べ物だね」
「こんな話をしてたらかなりお腹が空いてきた」
「ほんとだ、昼の一時過ぎてる」
スマホを取り出して澤田君は時間を確認していた。
「もうここに閉じ込められて二時間以上経ってるんだね」
折角ふたりで楽しい会話をしていたのに、商店街を見渡せばまた不安が押し寄せる。
本当にここから出られるのだろうか。