初恋ディストリクト
第二章 遡った以前のこと
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住宅街を歩いていると、ブロック塀に『猫に餌をやるな!』と書かれた張り紙が目に入った。
雨風に風化してボロボロになっている上に、乱暴に書かれた手書きの字が滲んでホラーみたいだ。
よほど猫が嫌いか、野良猫のせいで被害を被っているのか、猫への強い恨みを感じた。
そこに、渦中の猫が塀の上を素知らぬ顔をして歩いていった。
白と黒の混ざり合った猫だ。
さっきまで僕を見て、尻尾を立てて毛先だけをゆっくり左右に揺らして様子を窺っていた。
僕が張り紙を気にしたもんだから、まるで分かったかのように静かに去っていった。
動物は好きだけど、まだ責任がもてない中学生の僕では世話をきっちりすることはできないと思う。
でも側に寄り添ってくれる動物がいればいいなとは思うけど、ペット不可のアパートでは絶対に不可能だ。
犬が見たければ、桜ヶ丘公園で散歩すればいい。
あそこは犬を連れた人たちが、よく散歩している。
猫も時々こんな風に見かけるし、今は見ているだけで満足だ。
それで時々、学校の帰りに街を探索して色んなところをあちこち見て、動物に出会うのを楽しみとしている。
ちょっとした癒しを与えてくれたから。
この町に引っ越してきたのは中学三年になる前の春休みの時。
父と母が離婚して、ひとりっ子の僕は母についてきた。
ほんの二ヶ月前のことだ。
高校までエスカレーター式に上がれる私立校に入ったけど、授業料の問題もあって高校は公立に行く予定だ。
中学までは父が授業料の面倒みてくれるから、少し通学が不便になったけど、しっかりと通っている。
でも後で、近くの公立中学に転校してもよかったかもしれないと、時間が経ってから思ってしまった。
住宅街を歩いていると、ブロック塀に『猫に餌をやるな!』と書かれた張り紙が目に入った。
雨風に風化してボロボロになっている上に、乱暴に書かれた手書きの字が滲んでホラーみたいだ。
よほど猫が嫌いか、野良猫のせいで被害を被っているのか、猫への強い恨みを感じた。
そこに、渦中の猫が塀の上を素知らぬ顔をして歩いていった。
白と黒の混ざり合った猫だ。
さっきまで僕を見て、尻尾を立てて毛先だけをゆっくり左右に揺らして様子を窺っていた。
僕が張り紙を気にしたもんだから、まるで分かったかのように静かに去っていった。
動物は好きだけど、まだ責任がもてない中学生の僕では世話をきっちりすることはできないと思う。
でも側に寄り添ってくれる動物がいればいいなとは思うけど、ペット不可のアパートでは絶対に不可能だ。
犬が見たければ、桜ヶ丘公園で散歩すればいい。
あそこは犬を連れた人たちが、よく散歩している。
猫も時々こんな風に見かけるし、今は見ているだけで満足だ。
それで時々、学校の帰りに街を探索して色んなところをあちこち見て、動物に出会うのを楽しみとしている。
ちょっとした癒しを与えてくれたから。
この町に引っ越してきたのは中学三年になる前の春休みの時。
父と母が離婚して、ひとりっ子の僕は母についてきた。
ほんの二ヶ月前のことだ。
高校までエスカレーター式に上がれる私立校に入ったけど、授業料の問題もあって高校は公立に行く予定だ。
中学までは父が授業料の面倒みてくれるから、少し通学が不便になったけど、しっかりと通っている。
でも後で、近くの公立中学に転校してもよかったかもしれないと、時間が経ってから思ってしまった。