初恋ディストリクト
向こう側にも出入り口があり、白く光っていた。
「ねぇ、澤田君」
私が呼びかけると澤田君が振り返った。
私は澤田君の顔を見つめる。
目が合うと相変わらず優しく微笑みを返してくれた。
「どうしたの?」
「それじゃさ、ふと思ったんだけど、あっちも同じように広がってるってことかな」
今までのところ、この商店街の真ん中から両端へと、店舗を区切りとして徐々に広がっていくのは確かめた。
「じゃあ、確かめてこようか」
澤田君がもう一方の端へと歩きかけた時、私は止めた。
「別に確かめなくてもいいよ。多分そうなんだよ。それに、広がっていたところで、この空間から抜け出せないんだから、確かめても無駄だよ」
私はこの絶望的な状況に慣れてしまって、そういうものだと決め付ける。
「わからないよ。もしかしたらそこに新たな発見があるかもしれないし、何事も自分で調べて納得しなくっちゃ。放っておいたら、そこからは進めないんじゃないかな」
「澤田君はポジティブだから」
「僕がポジティブだからという意味じゃないんだ。何もしないことがいやなんだ」
「えっ?」
「何もしなかったら、そこで終わってしまう。それって、変化を望まないってことじゃないか。無理だから、ダメだから、そんな気持ちに邪魔されて、僕はいつも動けなかった。まずは自分のそういう気持ちを変えたいんだ。例え、そこに何もなかったとしても、それを確かめることは決して無駄なことではないと思う」
言い切った後、私を見てハッとし恥ずかしがっていた。
それは澤田君の真面目な部分なんだと思う。
すごいとは思うんだけど、面と向かってどう反応していいかわからないのが私だった。
投げやりな自分が少し恥ずかしい。
「ご、ごめん。別に栗原さんを責めたわけじゃないんだよ」
「そんなの分かってるって。ただ、圧倒された」
「僕、過去に色んなことで後悔してるから、つい、力入っちゃって」
「わかった。じゃあ、見に行ってみよう」
「でも、何もなかったらごめんね」
「なんで、そこで弱気になってんの」
芯はしっかりしているのに、最後でなよっとしてしまう澤田君。
でも向こう側へと、張り切って前を歩き、私はその後をついていく。
まだ少年であどけない部分が目立つけど、その後姿は精悍だ。
私は振り返り、先ほどの猫がどうなったか確認する。
今のところ、その姿は見えずじまいだった。
そのうちまた出てくるのかもしれない。
今はそれを信じるしかない。
「ねぇ、澤田君」
私が呼びかけると澤田君が振り返った。
私は澤田君の顔を見つめる。
目が合うと相変わらず優しく微笑みを返してくれた。
「どうしたの?」
「それじゃさ、ふと思ったんだけど、あっちも同じように広がってるってことかな」
今までのところ、この商店街の真ん中から両端へと、店舗を区切りとして徐々に広がっていくのは確かめた。
「じゃあ、確かめてこようか」
澤田君がもう一方の端へと歩きかけた時、私は止めた。
「別に確かめなくてもいいよ。多分そうなんだよ。それに、広がっていたところで、この空間から抜け出せないんだから、確かめても無駄だよ」
私はこの絶望的な状況に慣れてしまって、そういうものだと決め付ける。
「わからないよ。もしかしたらそこに新たな発見があるかもしれないし、何事も自分で調べて納得しなくっちゃ。放っておいたら、そこからは進めないんじゃないかな」
「澤田君はポジティブだから」
「僕がポジティブだからという意味じゃないんだ。何もしないことがいやなんだ」
「えっ?」
「何もしなかったら、そこで終わってしまう。それって、変化を望まないってことじゃないか。無理だから、ダメだから、そんな気持ちに邪魔されて、僕はいつも動けなかった。まずは自分のそういう気持ちを変えたいんだ。例え、そこに何もなかったとしても、それを確かめることは決して無駄なことではないと思う」
言い切った後、私を見てハッとし恥ずかしがっていた。
それは澤田君の真面目な部分なんだと思う。
すごいとは思うんだけど、面と向かってどう反応していいかわからないのが私だった。
投げやりな自分が少し恥ずかしい。
「ご、ごめん。別に栗原さんを責めたわけじゃないんだよ」
「そんなの分かってるって。ただ、圧倒された」
「僕、過去に色んなことで後悔してるから、つい、力入っちゃって」
「わかった。じゃあ、見に行ってみよう」
「でも、何もなかったらごめんね」
「なんで、そこで弱気になってんの」
芯はしっかりしているのに、最後でなよっとしてしまう澤田君。
でも向こう側へと、張り切って前を歩き、私はその後をついていく。
まだ少年であどけない部分が目立つけど、その後姿は精悍だ。
私は振り返り、先ほどの猫がどうなったか確認する。
今のところ、その姿は見えずじまいだった。
そのうちまた出てくるのかもしれない。
今はそれを信じるしかない。