初恋ディストリクト
澤田君の後を追いかけ、私は横に並んだ。まじまじ見れば肩の位置が結構高いことに気がついた。
「改めてみると、澤田君、背が高いよね。身長どれくらいあるの?」
「178cm」
「もうすぐ180cm越えるかもね」
「これ以上伸びたら面倒くさいな」
「背が高いって面倒くさいものなの?」
「あっ、いや、この間も伸びたところなんだ。だから急激に身長ってあまり伸びて欲しくないなって」
「私としては、体重は急激に増えてほしくないな」
私の返しに澤田君はクスッと笑ってくれた。
そんな他愛のない会話をしながら壁に気をつけて歩けるところまで歩く。
やはりこちらも空間は広がっていた。
念のため、何かの変化がないか澤田君は念入りに見えない壁を確認していた。
「このまま空間が広がったら、両端の商店街を抜けた先に出られるんだろうか」
もう一方の商店街の先の向こうを見つめながら、私は訊いた。
「どうなるんだろうね。この商店街を中心としてずっとずっと徐々に広がれば、この街全体にまで大きくなって、そのうち地球全体規模に見えない壁などなくなるのかも」
「もしかしてどこにも壁がなくなった時に、元の世界に戻れるとか?」
「そうなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない」
「そうだったとしたら、気の遠くなるような時間がかかるんじゃない? でもさ、この商店街の中で起こっているように、空間は広がっても建物の中に入れないし、この世界のものにも触れられないし、どうやって生きていくための必要なものを手に入れるの?」
「全く触れられないこともないかもしれない。現に僕は見えない壁を越え、椅子に触れられてこっちの空間に持ってこれたし」
「それでも、こっち側に来たら地面にくっついて動かせなくなった。取り出しても、また何かの法則が発動するんだよ」
「今はまだ答えを出すには早いと思う。この商店街から抜け出したら、また何かが変わるんじゃないかな。この調子だと空間は広がり続けているから、また少し様子をみよう」
澤田君は私を励まそうと笑顔を絶やさなかった。私もその笑顔にならってポジティブに考えてみた。
「椅子を取り出した時さ、猫が先にそこに座ってたよね。もしかしたら、猫が触れたものやその周りにあるものが取り出せるのかも」
「うん、そういう考えもできるよね。あの時、違う空間から何かを取り出したって気分だった」
ちょうどこの空間に沿って、お菓子やさんと果物やさんが向かい合っていた。店先にお菓子や果物が今日の特売品みたいに置かれている。そこに猫が来てくれれば取り出せるのかもしれない。
「お腹すいたね」
つい口から漏れてしまった。
「そうだね」
澤田君も自分のお腹に触れて、頼りなく笑っていた。
「改めてみると、澤田君、背が高いよね。身長どれくらいあるの?」
「178cm」
「もうすぐ180cm越えるかもね」
「これ以上伸びたら面倒くさいな」
「背が高いって面倒くさいものなの?」
「あっ、いや、この間も伸びたところなんだ。だから急激に身長ってあまり伸びて欲しくないなって」
「私としては、体重は急激に増えてほしくないな」
私の返しに澤田君はクスッと笑ってくれた。
そんな他愛のない会話をしながら壁に気をつけて歩けるところまで歩く。
やはりこちらも空間は広がっていた。
念のため、何かの変化がないか澤田君は念入りに見えない壁を確認していた。
「このまま空間が広がったら、両端の商店街を抜けた先に出られるんだろうか」
もう一方の商店街の先の向こうを見つめながら、私は訊いた。
「どうなるんだろうね。この商店街を中心としてずっとずっと徐々に広がれば、この街全体にまで大きくなって、そのうち地球全体規模に見えない壁などなくなるのかも」
「もしかしてどこにも壁がなくなった時に、元の世界に戻れるとか?」
「そうなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない」
「そうだったとしたら、気の遠くなるような時間がかかるんじゃない? でもさ、この商店街の中で起こっているように、空間は広がっても建物の中に入れないし、この世界のものにも触れられないし、どうやって生きていくための必要なものを手に入れるの?」
「全く触れられないこともないかもしれない。現に僕は見えない壁を越え、椅子に触れられてこっちの空間に持ってこれたし」
「それでも、こっち側に来たら地面にくっついて動かせなくなった。取り出しても、また何かの法則が発動するんだよ」
「今はまだ答えを出すには早いと思う。この商店街から抜け出したら、また何かが変わるんじゃないかな。この調子だと空間は広がり続けているから、また少し様子をみよう」
澤田君は私を励まそうと笑顔を絶やさなかった。私もその笑顔にならってポジティブに考えてみた。
「椅子を取り出した時さ、猫が先にそこに座ってたよね。もしかしたら、猫が触れたものやその周りにあるものが取り出せるのかも」
「うん、そういう考えもできるよね。あの時、違う空間から何かを取り出したって気分だった」
ちょうどこの空間に沿って、お菓子やさんと果物やさんが向かい合っていた。店先にお菓子や果物が今日の特売品みたいに置かれている。そこに猫が来てくれれば取り出せるのかもしれない。
「お腹すいたね」
つい口から漏れてしまった。
「そうだね」
澤田君も自分のお腹に触れて、頼りなく笑っていた。