初恋ディストリクト
結局何も見つけられなかった私たちは、がっくりと肩を落としてしまった。
澤田君も申し訳なさそうに、私の様子を気にしていた。
暫く口数少なくなってしまうと、私たちの間にしらっとした空気が流れていくのが見えてしまった。
このままではまた悪い方向にいくんじゃないだろうか。
不安になると物事はいつも悪い方向にしか考えられなくなっていく。
せめてこの流れを変えたい。私から行動してみよう。
「ねぇ、澤田君」
「どうしたの?」
ここまではいい。
話すきっかけになった。
しかし、ここからどう話題を振ろうか。
なんでもいい。
歌でも歌おうか。
こういうときに楽しく盛り上げられる話題と言えばと思った時、ぱっと閃いた。
「あのさ、しりとりしようよ」
「しりとり?」
「そう、ずっと黙ってたらさ元気なくなりそうだから、何かして気を紛らわそうと思って。そういう時って、しりとりがいいでしょ」
「そうだよね。こういうときこそ楽しむ。それいいかもしれない。やってみよう」
「じゃあさ、普通にしてたら面白くないから、白いもの限定のルールでチャレンジしてみない?」
「白いものの名前しかだめなの?」
「そう。じゃあ、私からいくよ。とうふ」
こういうのは先手で攻めるのがいい。
「ふ、ふ……ふがつくもので白いもの」
澤田君はじっくりと考えていた。
「あっ、ふと……んっ?」
ふとんと言いかけた澤田君は最後で息をつまらせ、慌ててつけたす。
「……の綿!」
「ふとんの綿。おお、そう来たか。危なかったね」
私がからかうと、澤田君はセーフといいたげに息を吐いていた。
「次は『た』だね。た、た」と『た』を繰り返す。
白いもの限定は結構難しい。
だからこそやりがいがある。
「た、タイのほね」
「鯛の骨? なるほど、確かに骨は白い。やるね」
「フフフ。次は『ね』だよ」
得意になりながら、澤田君を煽る。
「ね、ね……」
「どう、降参かな」
「まだ始まったばかりで降参はちょっと。うーん、ね、ね、あっ! ねんがじょう」
澤田君はちょっとテンション高く口にした。
「なるほど年賀状か。確かに白い。次は『う』だね。う、う」
単純に『うし』を連想するけど白黒だし、あっ、閃いた。
「うしのちち!」
「牛の乳。すなわち牛乳か。それも確かに白い。よし、次は、ち、ち、ち……」
澤田君は悩んでいた。
『ち』から始まる白いものを一生懸命想像し「うーん」とうなっている。
「どうやらこれで勝負は決まりそうね」
「いや、そうはさせないぞ。ち、ち、ち、あっ、ちぎれ雲! どうだ」
「おお、やるではないか、澤田君。しかもまさに白い」
「へへへ。じゃあ次、『も』だよ」
なんかむきになってくる。これは負けられない。
「も、も、も……、あっ、もち!」
「えっ、また『ち』か。ち、ち、ち」
さっきはちぎれ雲なんて綺麗にまとめてくれたけど、連続しての『ち』はさすがに難しいだろう。
「あっ、ちり紙」
澤田君はあっさりと返してきた。
「ちり紙の『み』だね。み、み、ミルク!」
さっきの牛の乳と被ってしまうけど、文字は違うからセーフだ。
「ミルク。うまいこところついて来るな。次は、『く』だね、く、く……あっ、これは簡単だ。クリーム」
「ミルクからのクリームか、これは連想もあって、すぐに浮かびやすい。不覚だった」
「さあ、次は『ム』だよ。思い浮かぶかな」
澤田君はすっかりのってきて、いたずらっぽく笑っていた。
よし、その挑戦受けてたとうではないか。
「次は、『む』だね。む、む、む、む……」
『む』から始まる言葉ってなかなか難しい。
白いもので『む』から始まるもの。
私はうーんと考え込んだ。
澤田君も申し訳なさそうに、私の様子を気にしていた。
暫く口数少なくなってしまうと、私たちの間にしらっとした空気が流れていくのが見えてしまった。
このままではまた悪い方向にいくんじゃないだろうか。
不安になると物事はいつも悪い方向にしか考えられなくなっていく。
せめてこの流れを変えたい。私から行動してみよう。
「ねぇ、澤田君」
「どうしたの?」
ここまではいい。
話すきっかけになった。
しかし、ここからどう話題を振ろうか。
なんでもいい。
歌でも歌おうか。
こういうときに楽しく盛り上げられる話題と言えばと思った時、ぱっと閃いた。
「あのさ、しりとりしようよ」
「しりとり?」
「そう、ずっと黙ってたらさ元気なくなりそうだから、何かして気を紛らわそうと思って。そういう時って、しりとりがいいでしょ」
「そうだよね。こういうときこそ楽しむ。それいいかもしれない。やってみよう」
「じゃあさ、普通にしてたら面白くないから、白いもの限定のルールでチャレンジしてみない?」
「白いものの名前しかだめなの?」
「そう。じゃあ、私からいくよ。とうふ」
こういうのは先手で攻めるのがいい。
「ふ、ふ……ふがつくもので白いもの」
澤田君はじっくりと考えていた。
「あっ、ふと……んっ?」
ふとんと言いかけた澤田君は最後で息をつまらせ、慌ててつけたす。
「……の綿!」
「ふとんの綿。おお、そう来たか。危なかったね」
私がからかうと、澤田君はセーフといいたげに息を吐いていた。
「次は『た』だね。た、た」と『た』を繰り返す。
白いもの限定は結構難しい。
だからこそやりがいがある。
「た、タイのほね」
「鯛の骨? なるほど、確かに骨は白い。やるね」
「フフフ。次は『ね』だよ」
得意になりながら、澤田君を煽る。
「ね、ね……」
「どう、降参かな」
「まだ始まったばかりで降参はちょっと。うーん、ね、ね、あっ! ねんがじょう」
澤田君はちょっとテンション高く口にした。
「なるほど年賀状か。確かに白い。次は『う』だね。う、う」
単純に『うし』を連想するけど白黒だし、あっ、閃いた。
「うしのちち!」
「牛の乳。すなわち牛乳か。それも確かに白い。よし、次は、ち、ち、ち……」
澤田君は悩んでいた。
『ち』から始まる白いものを一生懸命想像し「うーん」とうなっている。
「どうやらこれで勝負は決まりそうね」
「いや、そうはさせないぞ。ち、ち、ち、あっ、ちぎれ雲! どうだ」
「おお、やるではないか、澤田君。しかもまさに白い」
「へへへ。じゃあ次、『も』だよ」
なんかむきになってくる。これは負けられない。
「も、も、も……、あっ、もち!」
「えっ、また『ち』か。ち、ち、ち」
さっきはちぎれ雲なんて綺麗にまとめてくれたけど、連続しての『ち』はさすがに難しいだろう。
「あっ、ちり紙」
澤田君はあっさりと返してきた。
「ちり紙の『み』だね。み、み、ミルク!」
さっきの牛の乳と被ってしまうけど、文字は違うからセーフだ。
「ミルク。うまいこところついて来るな。次は、『く』だね、く、く……あっ、これは簡単だ。クリーム」
「ミルクからのクリームか、これは連想もあって、すぐに浮かびやすい。不覚だった」
「さあ、次は『ム』だよ。思い浮かぶかな」
澤田君はすっかりのってきて、いたずらっぽく笑っていた。
よし、その挑戦受けてたとうではないか。
「次は、『む』だね。む、む、む、む……」
『む』から始まる言葉ってなかなか難しい。
白いもので『む』から始まるもの。
私はうーんと考え込んだ。