初恋ディストリクト
澤田君の手の温かさと、ぎゅっと握られた感触が心地いい。
澤田君と一緒なら頑張れる。
澤田君のにこやかな顔を見たとき、私は澤田君の事が好きだと自分に正直になった。
『澤田君が好き』
手を握りながら、私は心の中で呟いた。
その時、澤田君は辺りをキョロキョロする。
「そういえばさ、猫は確か、あの看板の辺りに隠れたんだったよね」
あっ、猫。そうだった。あの猫は今どこに居るんだろう。
百円ショップの隣はチケットショップだった。
扱っている商品を紹介した立て看板と店の名前が目立つように電飾看板が並んで置かれていた。
この辺りで猫が消えたように見えたんだった。
その周りを良く調べたけども、猫はすでに移動したのか、その姿は見えなかった。
それよりもその隣、この商店街の一番端にある店に興味を抱いた。
色とりどりに美味しそうなケーキがショーケースの中に入っている。
それが商店街の通りに面していた。
「うわ、おいしそう」
お腹が空いているから余計に食べたくなってしまう。
「ほんとだ、美味しそうだね」
「ねぇ、ここから出たらやることのひとつに、一緒にケーキも食べることも付け加えようよ」
「いいね。それ」
カラフルなケーキをバックに、あどけなく笑う澤田君。かわいい。私がスマホを持っていれば、写真を撮ったのに。あっ、澤田君に借りればいいか。
「あのさ、澤田君、ちょっとスマホ貸してくれない?」
「何するの?」
澤田君はジャケットのポケットからスマホを取り出しながら訊いた。
「ケーキと澤田君の写真撮らせて」
「それじゃ、記念に一緒に撮ろうか」
澤田君は私の側に寄りスマホを掲げる。
私もできるだけ澤田君と密着する。
ケーキ屋をバックにパシャリと一枚撮った。
それをふたりで確認する。
澤田君の腕を抱きしめ、にんまりと少しふざけたように私は笑っている。
その隣で恥ずかしそうに笑う澤田君。
「いい感じに撮れてる。ねぇ、それ私のスマホにあとで送ってくれる?」
「うん、いいよ。メアド教えて」
澤田君はスマホを操作して、私のメールアドレスを打ち込んだ。
「今は送信できないけど、ここから出たら必ず送るね」
澤田君の言い方だと、このあとすぐに出られるように聞こえた。
本当にそうであったらいいと、私は出入り口をふさいだ壁を振り返る。
依然変わらず、外が見えないまま巨大な南極の氷の壁のようだ。
見ているとその大きな存在に打ちのめされそうでため息が出てきた。
「大丈夫だよ。きっと出られるから。ふたりで信じよう」
澤田君が言うんだから間違いない。
「そしたら次はどうやって楽しむ?」
この場所で澤田君と何をして楽しんだらいいのだろう。
私が考えているとき、澤田君があっさりと言った。
澤田君と一緒なら頑張れる。
澤田君のにこやかな顔を見たとき、私は澤田君の事が好きだと自分に正直になった。
『澤田君が好き』
手を握りながら、私は心の中で呟いた。
その時、澤田君は辺りをキョロキョロする。
「そういえばさ、猫は確か、あの看板の辺りに隠れたんだったよね」
あっ、猫。そうだった。あの猫は今どこに居るんだろう。
百円ショップの隣はチケットショップだった。
扱っている商品を紹介した立て看板と店の名前が目立つように電飾看板が並んで置かれていた。
この辺りで猫が消えたように見えたんだった。
その周りを良く調べたけども、猫はすでに移動したのか、その姿は見えなかった。
それよりもその隣、この商店街の一番端にある店に興味を抱いた。
色とりどりに美味しそうなケーキがショーケースの中に入っている。
それが商店街の通りに面していた。
「うわ、おいしそう」
お腹が空いているから余計に食べたくなってしまう。
「ほんとだ、美味しそうだね」
「ねぇ、ここから出たらやることのひとつに、一緒にケーキも食べることも付け加えようよ」
「いいね。それ」
カラフルなケーキをバックに、あどけなく笑う澤田君。かわいい。私がスマホを持っていれば、写真を撮ったのに。あっ、澤田君に借りればいいか。
「あのさ、澤田君、ちょっとスマホ貸してくれない?」
「何するの?」
澤田君はジャケットのポケットからスマホを取り出しながら訊いた。
「ケーキと澤田君の写真撮らせて」
「それじゃ、記念に一緒に撮ろうか」
澤田君は私の側に寄りスマホを掲げる。
私もできるだけ澤田君と密着する。
ケーキ屋をバックにパシャリと一枚撮った。
それをふたりで確認する。
澤田君の腕を抱きしめ、にんまりと少しふざけたように私は笑っている。
その隣で恥ずかしそうに笑う澤田君。
「いい感じに撮れてる。ねぇ、それ私のスマホにあとで送ってくれる?」
「うん、いいよ。メアド教えて」
澤田君はスマホを操作して、私のメールアドレスを打ち込んだ。
「今は送信できないけど、ここから出たら必ず送るね」
澤田君の言い方だと、このあとすぐに出られるように聞こえた。
本当にそうであったらいいと、私は出入り口をふさいだ壁を振り返る。
依然変わらず、外が見えないまま巨大な南極の氷の壁のようだ。
見ているとその大きな存在に打ちのめされそうでため息が出てきた。
「大丈夫だよ。きっと出られるから。ふたりで信じよう」
澤田君が言うんだから間違いない。
「そしたら次はどうやって楽しむ?」
この場所で澤田君と何をして楽しんだらいいのだろう。
私が考えているとき、澤田君があっさりと言った。