初恋ディストリクト
◇栗原智世の時間軸
私が存在する元の世界線。
無事に戻ってこれた夜、福を側に置いて澤田君の事を考えながら眠りについた。
澤田君との出会いから、誰もいなくなった商店街。
見えない壁の存在。
閉じ込められた恐怖。
元の世界に戻るためにふたりで一緒に考えて、色々と試して次第に心が通っていったこと。
それは楽しい出来事だったように、口元は微笑んでしまう。
そうしてもう会えないと思ったとき涙で目じりが濡れた。
寝返りを打てば、足元で丸くなっていた福がむくりと起き上がり、遠慮なく私の体を踏んで枕元にのそのそとやって来た。
「福ちゃんちょっと痛いよ」
暫く枕の端を踏み踏みした後、私の隣で再び丸くなって落ち着く。
目の前に横たわった福。
私は顔を埋めて福の柔らかいもふもふの毛並みを荒っぽくスーハーしてしまう。
福が「にゃーん」と頭をもたげて私に振り返った。
止めてという意味だったのだろうか。
心なしか目が睨んでいた。
「福ちゃん、つれないな。ちょっとぐらいいいじゃない。今日はさ、色々とあったんだよ」
じーっと私を見つめてから、再び丸くなったので、その後は、そっと撫でてやった。
今度は気に入ったのか、喉をゴロゴロ鳴らしだした。
静寂な暗闇で聞くその低く振動する音はとても優しくて、私の心を慰めてくれる。
「福ちゃん、ありがとね」
しばらく福を撫で、喉のゴロゴロを楽しんだ。
その音を聞いているうちにすっと眠りに落ちていった。
私が存在する元の世界線。
無事に戻ってこれた夜、福を側に置いて澤田君の事を考えながら眠りについた。
澤田君との出会いから、誰もいなくなった商店街。
見えない壁の存在。
閉じ込められた恐怖。
元の世界に戻るためにふたりで一緒に考えて、色々と試して次第に心が通っていったこと。
それは楽しい出来事だったように、口元は微笑んでしまう。
そうしてもう会えないと思ったとき涙で目じりが濡れた。
寝返りを打てば、足元で丸くなっていた福がむくりと起き上がり、遠慮なく私の体を踏んで枕元にのそのそとやって来た。
「福ちゃんちょっと痛いよ」
暫く枕の端を踏み踏みした後、私の隣で再び丸くなって落ち着く。
目の前に横たわった福。
私は顔を埋めて福の柔らかいもふもふの毛並みを荒っぽくスーハーしてしまう。
福が「にゃーん」と頭をもたげて私に振り返った。
止めてという意味だったのだろうか。
心なしか目が睨んでいた。
「福ちゃん、つれないな。ちょっとぐらいいいじゃない。今日はさ、色々とあったんだよ」
じーっと私を見つめてから、再び丸くなったので、その後は、そっと撫でてやった。
今度は気に入ったのか、喉をゴロゴロ鳴らしだした。
静寂な暗闇で聞くその低く振動する音はとても優しくて、私の心を慰めてくれる。
「福ちゃん、ありがとね」
しばらく福を撫で、喉のゴロゴロを楽しんだ。
その音を聞いているうちにすっと眠りに落ちていった。