初恋ディストリクト
沙耶子さんはまだ半信半疑だったけど、澤田君の事を話したとき、納得いくものが多々あって、時々涙ぐみながらとても興味深く聞いていた。
「また隼八に会えるときがあるのかしら」
沙耶子さんも会いたいに違いない。
会えば私の話が本当だったと信じてもらえるはずだ。
でも私にはわからない。
私だってまた会いたし、できることなら七夕のように一年に一回でもあえる機会があればいいのにとも思う。
でも私の中ではすでにあのようなことが起こるにはかなり難しいと思っていた。
私が返事に困っていると沙耶子さんも察したみたいだ。
丁度その時、ご飯が炊き上がった知らせの音楽がなった。
「あっ、焚けたわ。この熱々をのがしちゃだめなのよ」
沙耶子さんはさっと立ち上がり、炊飯器の蓋をあける。
熱々の水蒸気がもわっと立ち上がった。
しゃもじで炊き立てのご飯を軽くかき混ぜてから、布巾をつかって炊飯器からお釜を取り出した。
「智世さん、そこにある寿司桶をテーブルに置いて」
「はい」
手巻き寿司で使う小さな桶だった。
沙耶子さんは寿司桶にお釜をひっくり返す。
「さあ、熱いうちに材料を入れるわよ」
楽しそうに微笑む。
その中に刻んだほうれん草、ペースト状の梅干、大さじ二杯ずつの粉チーズと胡麻を入れた。
それを素早くかき混ぜる。
ほうれん草の緑と梅干の赤味がコントラストに綺麗だ。
そこに粉チーズが熱さに溶けて糸を引き出した。
胡麻は時々キラキラときらめくように顔を覗かせる。
とても賑やかにそれらは混ざっていった。
そういえばまだお昼を食べてなかった。
お腹が空いたのを思い出すようにグーッと鳴り響いた。
沙耶子さんはクスッと笑う。
まだ炊き立てで熱々なのに、手に水をつけて、おにぎりを握り出した。
手のひらが赤くなりながらご飯を転がして三角に握っていく。
握り終わるとすぐに私の目の前に差し出した。
「いいんですか?」
「もちろんよ。お腹空いているんでしょ」
「ありがとうございます」
私はそのおにぎりを手にした。
澤田君の大好きなアルティメットおにぎり。
澤田君はどんな顔をして食べたのだろう。
私は澤田君を思い浮かべながらがぶっと勢いよく噛んだ。
はちみつ梅の甘酸っぱさと、チーズが混ざり合うハーモニーは酸っぱさの中にコクがあるうまみを感じる。
そこにプチプチとした胡麻の触感。
ほうれん草は梅とチーズの塩気と混ざり合って、癖のない葉っぱにとても味がよく絡んでいた。
「うわ、おいしい」
「そう、よかった」
沙耶子さんは次々におにぎりを握っていく。
そのひとつを小さなお皿に入れて、澤田君の前にもお供えした。
私も、澤田君の前に座って、畏まって一緒に食べた。
「美味しいね、澤田君」
じんわりと目頭が熱くなりながら、しっかりと味わって咀嚼した。
「また隼八に会えるときがあるのかしら」
沙耶子さんも会いたいに違いない。
会えば私の話が本当だったと信じてもらえるはずだ。
でも私にはわからない。
私だってまた会いたし、できることなら七夕のように一年に一回でもあえる機会があればいいのにとも思う。
でも私の中ではすでにあのようなことが起こるにはかなり難しいと思っていた。
私が返事に困っていると沙耶子さんも察したみたいだ。
丁度その時、ご飯が炊き上がった知らせの音楽がなった。
「あっ、焚けたわ。この熱々をのがしちゃだめなのよ」
沙耶子さんはさっと立ち上がり、炊飯器の蓋をあける。
熱々の水蒸気がもわっと立ち上がった。
しゃもじで炊き立てのご飯を軽くかき混ぜてから、布巾をつかって炊飯器からお釜を取り出した。
「智世さん、そこにある寿司桶をテーブルに置いて」
「はい」
手巻き寿司で使う小さな桶だった。
沙耶子さんは寿司桶にお釜をひっくり返す。
「さあ、熱いうちに材料を入れるわよ」
楽しそうに微笑む。
その中に刻んだほうれん草、ペースト状の梅干、大さじ二杯ずつの粉チーズと胡麻を入れた。
それを素早くかき混ぜる。
ほうれん草の緑と梅干の赤味がコントラストに綺麗だ。
そこに粉チーズが熱さに溶けて糸を引き出した。
胡麻は時々キラキラときらめくように顔を覗かせる。
とても賑やかにそれらは混ざっていった。
そういえばまだお昼を食べてなかった。
お腹が空いたのを思い出すようにグーッと鳴り響いた。
沙耶子さんはクスッと笑う。
まだ炊き立てで熱々なのに、手に水をつけて、おにぎりを握り出した。
手のひらが赤くなりながらご飯を転がして三角に握っていく。
握り終わるとすぐに私の目の前に差し出した。
「いいんですか?」
「もちろんよ。お腹空いているんでしょ」
「ありがとうございます」
私はそのおにぎりを手にした。
澤田君の大好きなアルティメットおにぎり。
澤田君はどんな顔をして食べたのだろう。
私は澤田君を思い浮かべながらがぶっと勢いよく噛んだ。
はちみつ梅の甘酸っぱさと、チーズが混ざり合うハーモニーは酸っぱさの中にコクがあるうまみを感じる。
そこにプチプチとした胡麻の触感。
ほうれん草は梅とチーズの塩気と混ざり合って、癖のない葉っぱにとても味がよく絡んでいた。
「うわ、おいしい」
「そう、よかった」
沙耶子さんは次々におにぎりを握っていく。
そのひとつを小さなお皿に入れて、澤田君の前にもお供えした。
私も、澤田君の前に座って、畏まって一緒に食べた。
「美味しいね、澤田君」
じんわりと目頭が熱くなりながら、しっかりと味わって咀嚼した。