初めて恋と知った時私の全てがあなたになる
「本当に急で申し訳なかったね」

「まさか会長から直接頼まれるとは思いもしませんでした」

矢島課長はバツが悪そうに苦笑いをした。

「元々うちの秘書課の者が社長秘書をしていたんだが、三日ともたなくてね……他にも何人かかわったが、全滅。それでセクリタリーアクトさんにお願いしたんだけど……」

なんか、私はとんでもないことを引き受けたのかもしれない。

どうしよう。逃げ出したいかも。

「あっ、ごめん。脅すつもりなんてないんだよ。社長は決して悪い人じゃない。社員やお客様を第一に考えている点は会長譲り。ただ、ちょっと仕事に熱心すぎるだけ。会長の秘書をやっていた鮫島さんならきっと大丈夫よね。だからよろしく頼みます」

「は、はい」

 逃げられるわけないか。

「じゃあ行きましょうか」

「はい」

私たちはエレベーターに乗り社長室のある20階へと向かった。

最上階には社長室の他に各役員の部屋。それに秘書課と会議室がある。

エレベーターを降りると、緊張感が走る。

一体どんな人だろう。

私の頭に思い浮かぶのは両腕を高く上げ今にも襲い掛かろうとしているグリズリー。

もしくは頭にツノの生えた鬼。
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