夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 夢なんて、見なければ良かった。
 亮介を信じなければ良かった。

 期待していた私が馬鹿だった。

 違う。本当は薄々、気付いていた。亮介から連絡が来ない時点で、駄目だったと私が理解するべきだったんだ。

 悔しさが涙となって滲み、今にも零れ落ちそうで、嶺奈は亮介に背を向ける。

 もう披露宴のときのような失態は犯さないと、決めていたのに。

 私は弱虫な自分が大嫌い。だから、もう貴方に心を許したりはしない。これで、本当に終わりにするから。

「……さよなら」

 亮介──。

 嶺奈は亮介の返事も聞かずに、個室を飛び出した。


 店の外は雨が降り始めていた。

 冬の冷たい雨は、身体を突き刺すような寒さで、身体の芯から凍えてしまいそうだった。夜空は雲に覆われていて、星も月すら見えない。真っ暗闇だった。
 
 私の心も、このまま凍結してしまえばいいのに。
 
 天気さえも私の味方はしてくれない。存在を否定されているような気がして、嶺奈は雨に濡れることも厭わずに街中を歩き出した。

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