夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
「ごめんなさい……」
嶺奈が時間を掛けて、ようやく絞り出した言葉は、彼に対する謝罪だった。
私は良平さんを裏切り、ずっと罪悪感を抱え続けていた。今は亮介の言葉に期待していたことを後悔している。
けれど、たった一言の謝罪で、今までの全てが許されるとは、当然思ってはいない。
嶺奈は目蓋を閉じて、彼の言葉を待つ。一瞬が永遠にも感じた。けれど、彼が発した言葉は意外なものだった。
「謝る必要はないよ」
突き放したような彼の物言いに、嶺奈は茫然自失し、行き場を失くした言い訳は、散り散りに霧散していく。
いくら悔恨しても、もう遅い。犯した過ちは無かったことには出来ない。
私は心のどこかで、良平さんが許してくれるのを期待していたのかもしれない。
けれど、勝手に裏切っておいて、都合が悪くなったら助けてもらおうだなんて、あまりにも虫が良すぎて、これでは亮介のしていることと何も変わらない。
私の謝罪は、ただの自己満足に過ぎなかった。
嶺奈は口を堅く閉ざして、静寂に耐える。