夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

「……プロポーズってこと?」

 彼の真意を確かめるように呟く。

 私の勘違いなら、それでも構わない。

 でも、もし違うのなら──。

 私は望んでも、良いのだろうか。
 良平さんとの未来を──。

「そう。レストランを予約して、明日のために色々と準備してた。だから、嶺奈を見つけられて良かった。もし、君が阿久津を選んでいたら、明日独り寂しくレストランで食事してたかと思うと……ね」

 苦笑を浮かべて、彼はスーツのポケットから指輪を取り出す。

 それは復讐の契約を交わした頃に、彼が買ってくれた指輪だった。値段が高価だったこともあり、結局一度も着けないまま、ジュエリーケースに大切に仕舞っていたのだ。

 彼は、その指輪を嶺奈のドレッサーの引出しから、こっそり持ち出していたようだ。

 これでは、万が一無くしたとしても気付かないかもしれない。

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