夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
「……良平さんは、本当に私でいいの?」
──私を選んで、後悔しない?
最後の言葉を飲み込んで、彼の様子を窺う。
良平さんは優しいから、情が移り私のことを見捨てられなくなっているだけなら、それは彼の本当の意思ではない。
だから、彼の答えを聞いて、傷付いたとしても私は受け止めなければいけない。
そんな嶺奈の覚悟を溶かしていくように、彼は自分自身の思いを告げる。
「まだ足りないなら、俺は何度でも言うよ。嶺奈以外の人と結婚する気はないし、好きになる気もない。……最初から嶺奈以外の女性には興味ないんだよ、俺は」
他人が聞けば、重すぎて引いてしまうような言葉も、これが彼の本当の気持ちだと知り、嶺奈は素直に受け止めた。
特別な魅力もない私を、彼は愛してくれているという事実に、また涙が溢れそうになる。
私はいつから、こんなに泣き虫だったのか。良平さんと出会ってからは、泣いてばかりだ。
恥ずかしさで俯いた嶺奈の顔を、彼は少しだけ強引に上向かせて、唇を重ね合わせた。
私がまた道を踏み外したとしても、彼はきっとこうして私の手を引いて、導いてくれるに違いない。