夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 レストランに到着すると、二人は指定されていた席に着いた。ガラス張りの窓からは、綺麗な夜景が一望でき、店内には静かなBGMが流れていて、とても心地良い雰囲気だった。

 けれど、高級レストランという慣れない空間に、嶺奈は萎縮していた。

 テーブルマナーもうろ覚えで、こんなことなら、もっと教養を身につけておくべきだったと今更ながらに後悔する。

 彼に恥をかかせたくない。そう思うほどに、身体は緊張で強張り、自分の笑顔がぎこちなくなっているのが分かる。
 
 そんな彼女の心情に気づいたのか、彼は声のトーンを抑えて話かけてきた。

「そんなに畏まらなくても平気だよ。基本的なマナーさえ押さえてれば」
 
「情けない話だけれど、テーブルマナーに少し不安があるのよ……」
 
 嶺奈は平然を装うことを諦めて、彼に素直に告げた。

 知っているふりをして、後々恥をかくくらいなら、始めから宣言をしていたほうが、気持ち的にも少しは楽になれると思ったからだ。
 
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