夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
「ああ……それなら、俺に合わせれば大丈夫。分からなかったら、聞いて。せっかく来たんだし、嶺奈には楽しんでもらいたいから」
不安感を覚えている嶺奈とは対照的に、彼は慣れた様子で、フォークを手に取り、食事を始めた。
そんな余裕綽々な態度の彼が羨ましくなり、嶺奈は思わず視線を逸らした。
緊張してばかりで、余裕がないのは私だけみたい。なんとなく気づいてはいたけれど、やっぱり彼と私は住む世界がどこか違う気がして、自信を失っていく。
良平さんは、私を喜ばせようと、ここに連れて来てくれたのに……。
「もしかして、拗ねた?」
「拗ねてない」
上の空だった嶺奈は、彼に図星を指され、ぶっきらぼうに答える。
自分がいじけた子供みたいで、恥ずかしくなってくる。おかげで、美味しいはずの食事は、噛んでも味がよく分からなかった。