夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 ふと視線を戻すと彼は口許に手を当てて、何故か笑いを堪えて、嶺奈を見ていた。
 
「どうして、そこで笑うの」

「いや、可愛いなぁと思って。嶺奈のそんな顔、普段はなかなか見れないから、新鮮だね」

「良平さんの可愛いの定義が分からないわ」

 嶺奈は笑われたことに対して、少しムッとして皮肉を返す。我ながら大人げないし、可愛げも全くない。

 それなのに、どうして当たり前のように可愛いなんて言えるのか、不思議でならなかった。

 他人のことをとやかく言える立場ではないけれど、彼は本当に変わってる人だと思う。

 そんなことを思っていると、彼はさらに歯の浮いたような言葉を重ねてくる。

「嶺奈が何をしても可愛いってこと」

< 114 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop