夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 自分でも最低な問い掛けだと思う。

 けれど、良平さんの答えを解っていても、訊いてしまうのは不安だからかもしれない。安心ばかり求めているのは、誰かに愛される自信がないから。
 
「そうならないように、俺が努力するだけだよ」

 彼は真っ直ぐな視線で嶺奈を見据えて答えた。

 ほら、貴方はいつも私の欲しがる答えを用意している。

 彼は私を否定しない。

 その優しさが苦しいのに、甘えてしまうのは、私の意思があまりにも脆くて弱いから。

 底の見えない海に溺れていく感覚に、嶺奈は抗うことを止めた。

 嶺奈は決意して、微かに震える指先で、ジュエリーケースを受け取り、彼に告げた。
 
「……私で良ければ、お願いします」
 
 数秒の沈黙の後、伏せていた視線をゆっくりと上げると、彼が安堵の表情を浮かべているのが見えた。

「良かった……。やっぱり無理って言われたら、どうしようかと思ってた」

「無理だなんて思わないわ。むしろ、私のほうが拒絶されると思ってたから……」

「そんなことはないよ。言ったでしょ。嶺奈が俺を必要としなくなるまで、側にいるって」

 そう言って、彼はいつもの優しげな微笑を浮かべた。
 
 貴方が私を赦してくれるというのなら、私は貴方の望みを全て受け止めて、叶えたいと思う。

 例え、それが、私自身を苦しめるとこになったとしても──。



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