夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
「キスの一つもしてこないあなたに、何が出来るの」
「挑発されても、キスもその先もしない」
嶺奈の挑発に、彼は冷静さを乱すこともなく告げる。
もう、何も言い返せなかった。
何のために、ここに居るんだろう。
無意識の内に、彼に絆されてた?
そんなはずは、絶対にない。
「帰ります。やっぱり、来なければよかった」
捨て台詞を吐き、嶺奈はソファの脇に置いていたバッグを乱暴に取ると、立ち上がって、部屋を出ようとする。
「待って」
後ろから聞こえた彼の一言に、思わず足を止める。
「何ですか」
「その婚約者って、どんな人だった?」
唐突な質問に、嶺奈は振り向くと、彼を見据えて答えた。